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Netflixで人気グルメアニメ『美味しんぼ』を観ていると、時代の移り変わりによる食文化の変化に驚かされることが少なくない。
今では当たり前となっている食文化を、劇中の人物が珍しがっている。特にタイ料理などのエスニック料理は、登場人物によく物珍しそうに語られている。同作が放映されていたのは90年代初頭。それから20数年が経ち、タイ料理やエスニック料理を多くの人が楽しんでいる。食文化の多様化が進んだと考えられるだろう。
新ジャンル「オーガニックな冷凍食品」が登場
「食の多様化」は、様々な国の料理に手軽にアクセスできるようになったことだけに留まらない。オーガニック食品などのナチュラル志向や、ベジタリアンのような思想・信条または健康に気を使った食スタイルの一般化も、「食の多様化」の一端だ。
オーガニックが代表する「安全・健康志向」は、さらなる多様化を見せはじめている。
2017年4月、ナチュラル&オーガニックをテーマとしたセレクトショップ「ビープル バイ コスメキッチン」は、名古屋市に「Biople」という新店舗をオープン。同店舗では、オーガニックの冷凍食品が扱われている。たとえば、有機野菜を使ったピザやラザニアなどのチルド商品が販売中だ。
「健康・安全」の印象が強いオーガニック食品と、「利便性」の象徴であり、健康に配慮された商品の印象がない「冷凍食品」。これまで相反してきた2つの要素を融合させている。同店舗によれば、オーガニックフード業界では、「冷凍商品」のカテゴリが世界的トレンドになりつつあるのだという。
そんな流行の一端を見ることができるのが、ニューヨークで誕生した「デイリー・ハーベスト」だ。同社が販売しているのは、オーガニックなフルーツや野菜を使ったスムージーなどの冷凍食品。
フルーツや野菜は採取して3日経つと、栄養の多くを失ってしまうが、新鮮な状態で冷凍さえすれば高い栄養価を誇るのだという。
「デイリー・ハーベスト」はパッケージのデザインも優れており、“インスタジェニック“な商品を公式Instagramでチェックできる。美味しそうで、ファッショナブル。同店は、冷凍食品を健康的かつヒップなものとして印象付けている。
オーガニックと冷凍食品を使い分ける、ハイブリッドスタイル
「Biople」や「Daily Harvest」のように、オーガニックな冷凍食品の提供というアプローチとは異なる方向から、オーガニックと冷凍食品に取り組むプレイヤーがいる。それは、国内スーパー大手のイオンだ。
同社はフランスのオーガニックスーパー「Bio c’Bon(ビオセボン)」と、同じくフランスの冷凍食品専門店「Picard(ピカール)」を併設する形で麻布十番に新店舗をオープン。オーガニック食品と、最新の冷凍技術を使った上質な冷凍食品を、消費者がそれぞれのスタイルに合わせて購入できるようになっている。
健康に気を使ってオーガニックな食品を楽しみつつ、仕事や家事が忙しいときは上質な冷凍食品を使って、料理をする。生活スタイルに合わせて、オーガニック食品も冷凍食品も楽しむ。いいとこ取りのライフスタイルを提案している店舗と言えるのではないだろうか。
「合理性」の追求が新たな製品を生み出した
オーガニックの冷凍食品や、上質な冷凍食品とオーガニック食品を販売する店舗の登場から、人々が「食」に対して「合理性」を求めていることが読み解けるだろう。
冷凍食品の手軽さとオーガニック食品の健康志向、どちらも追求したい。なんとも欲張りなのが、現代人の特徴だ。
「合理性」を追求することで、「オーガニックな冷凍食品」が生まれ、食の多様性が促進された。世代の価値観を読み解き、そのエッセンスを既存のプロダクトやサービスに取り入れようと試みることで、ユーザーに受け入れられる新製品を生み出すことはできるのかもしれない。