VW、ベンツ、BMWーーいよいよ本格化する「EVシフト」の現状

日本0.6%、ドイツ0.7%、アメリカ0.9% ── この数字は2016年の自動車登録全体に占める、EVの割合を示す。

以前に比べれば、EVのテレビCMや広告を目にする機会は増えた。経産省の資料を見てもEVの登録台数は国内でも右肩上がりに増加している。とはいえ、世界全体で見ると、その普及率はノルウェーのような一部の国を除けば、まだまだ普及したと言えるレベルにはほど遠い。

ただ、2017年に入り、自動車業界には急激な変化が起こり始めている。イギリスやフランスなど欧州を中心に「将来的なガソリン車とディーゼル車の販売禁止」の発表が続き、自動車メーカー各社もそれに合わせるように続々と電動化計画を打ち出した。

世界中で地球温暖化や大気汚染の問題が深刻化するに伴って、各国で規制が厳格化する今。自動車業界でも、ガソリン車やディーゼル車から電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)への「EVシフト」が本格化してきている。

2019年に全車種を電動化する企業も!EVシフトの現状

欧州最大手であり2016年には世界販売台数1位にも輝いたVW(フォルクスワーゲン)は、2030年までにグループの全約300の車種に、電動モデルを設定する計画「Roadmap E」を2017年9月に発表した。

その目標のもと、まずは2025年までに合計80車種に電動化モデルを追加する計画を立てている。2025年にはVWの販売する新車の4台に1台をEVが占め、年間販売台数は最大300万台になると同社は予想している。

メルセデス・ベンツでおなじみのダイムラーも、2022年までにメルセデス・ベンツの全ての車種にEVまたはPHVモデルを用意する方針を発表。同社の小型乗用車ブランドsmartについては、一足早く2020年に北米と欧州で発売する全車両をEVにする計画を立てている。

同じくドイツのBMWも2025年までにEVを12車種発売し、PHVなどを含めれば25車種を投入する意向を発表。そのほかスウェーデンのボルボ・カーは2019年以降、イギリスのジャガー・ランドローバーは2020年以降に、販売する全ての車両をEVやPHVなど電動化モデルにするという高い目標を掲げている。

英仏は2040年にガソリン車とディーゼル車の販売禁止

欧州の自動車大手がこぞってEVシフトを進める背景には、温暖化抑制に向けた燃費規制がある。EUの規制は世界で最も厳しく、自動車メーカーは2021年に2015年と比較して30%近くCO2排出量を削減しなければいけない。ガソリン車やディーゼル車の改良だけでは基準値を下回ることが難しく、EVやPHEVに力を入れるのは必然ともいえる。

またEUの燃費規制と合わせて、大気汚染対策の一環として各国で進む「ガソリン車・ディーゼル車規制」もEVシフトに拍車をかけている。

2017年7月、イギリス政府は2040年から石油を燃料とするガソリン車とディーゼル車の販売を禁止すると明らかにした。報道によると販売禁止に向けた経過措置として、地方自治体が汚染のひどい地域へのディーゼル車の乗り入れを制限することなどを想定しているという。

少し前にフランス政府も2040年までに国内でのガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止する旨を発表。ノルウェーやスウェーデン、オランダなどでも同様の動きがある。

自動車大国ドイツでは、2030年までにエンジン車の販売禁止を求める法案が2016年に可決。メルケル首相みずから「ディーゼル車の新車販売を段階的に禁止する必要がある」と表明したこともあり、今後の動向が注目を集めている。

欧州以外でもインドが国内で販売するすべての自動車を2030年までに電気自動車のみにするという政策を発表、中国も化石燃料車の生産・販売禁止の検討を始めたという報道があった。

このような動きは2015年にVWの排ガス不正が発覚して以降、走行中の排ガス量に関心が高まったことも大きく影響している。VW以外の企業にも不正の疑惑が浮上し、ディーゼル車の乗り入れ規制を設ける都市もでてきているという。

近年EVやPHVがメディアで取り上げられる機会も増えたが、昨年の世界新車販売に占める比率はEVのみだとわずか0.5%ほど。ハイブリッド車を含めた電動車全体でも3%にも届かないというのが現状だ。

自動車メーカー外から参入する企業も

今後本格的に普及していくためには、蓄電池の改良や充電インフラの整備など、乗り越えていかなければいけない課題も多く、数年で急速に電動車が普及するというのは考えにくい。

ただし各国がガソリン車・ディーゼル車規制を設けると同時に、EVを優遇するような流れが本格化するようであれば、EVシフトのスピードは想像以上かもしれない。

そして、その時覇権を握っているのは、もしかしたら新興企業や異業種企業という可能性もありうる。つい先日、家電大手のダイソンが2020年までにEVに参入するという報道があった。400人規模の体制でバッテリーや車体、EVの肝となる電池までも基本的に自前で開発するほど本格的だ。

従来のエンジン車に比べて参入障壁が低く、今後も市場が拡大していくEV。思わぬ業界からの新参者も含めて、今後競争が激化していきそうだ。

img : VOLKSWAGEN, DAIMLER

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