デリバリーの革新は「ピザ」から始まる。ドローン、自動運転を牽引する「ピザテック」領域

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スマホの画面をタップすれば、ものの20分で家の玄関まで、おいしい食事が運ばれてくる。「UberEATS」や「fine Dine」などのオンデマンドフードデリバリーサービスは、現代人の生活に欠かせない存在となってきている。

和食や中華、タイ料理にサラダ専門店まで、豊富なメニューが取り扱われているが、やはりフードデリバリーの定番といえば、宅配ピザの右に出るものはないはずだ。なかでも、世界的なデリバリーピザチェーンのひとつ「ドミノ・ピザ」は、その画期的な取り組みが度々大きな話題を集めている。

ドミノ・ピザが牽引する「ピザテック」領域

筆者が学生時代に留学していたスコットランドでは「Domino’s Two For Tuesday」というキャンペーンが行われており、毎週火曜日は「一枚買ったら一枚タダ」。おかげで否応なしにピザパーティが開催された。日本国内でも「時給250万円でアルバイトスタッフ募集」「ドミノピザイケメンNo.1コンテスト」といったプロモーションが催されたのは記憶に新しい。

しかし昨今、ドミノ・ピザが注力して取り組んでいるのはプロモーションだけではない。デリバリーの真髄「早く、おいしく」を実現するため、最先端のテクノロジーを駆使した配達実験を次々と行っているのだ。

これまでのところ、ドローンをはじめ、ロボットや自動運転車といったIoTを活用してきている。いわば「ピザテック」ともいえるこの挑戦は、一体どのように進化しているのだろうか。

できたて10分以内のピザをドローンがお届け

ドミノ・ピザがはじめに取り入れたIoTは「ドローン」である。2015年には「Domi Copter」と名付けられた八翼のオクトコプターによるフライトテストが実施された。さらに2016年には、ニュージーランドの一部の地域で実際にドローンによる配達サービスを開始している。

ドミノグループのCEOであるDon Meij(ドン・メイジ)氏は「できたてのピザを10分以内に顧客に届けること」を最終的な目標としており、今後、オーストラリア、ベルギー、フランス、オランダ、日本、ドイツといった国でもサービスを拡大していく予定だ。

しかし、ドローンによるピザの配達が普及するには障壁も多い。2010年ごろから一気に技術革新が進み、いまや特別な訓練なしで誰もが簡単に扱えるようになったドローンだが、日本国内だけでも航空法や電波法の見直しといった規制ルールの整備が追いついていないのが現状だ。都心部では、ビルなどの障害物を確実に回避できるかという不安も残る。

今後ドミノ・ピザが取り組むドローンによるデリバリーの推進は、ドローン技術の革新や市場拡大に寄与していくことだろう。

可愛らしいロボットがピザを持ってやってくる

2017年3月からは、ドイツのハンブルクで、自走式ロボットによるデリバリーサービスが開始されている。このロボットは、エストニアのスタートアップ企業「Starship Technologies」が開発したものだ。6つの車輪がついた、ころんとしたフォルムは『スターウォーズ』の「R2-D2」や「BB-8」を思わせる。

歩道を人間が歩くのと同じようなスピードでのんびりと進むため、ドローンと比べると配達効率が飛躍的に上がるとはいえない。しかし、障害物への追突や墜落の危険性、規制ルール整備までにかかる労力などを鑑みると、デリバリーロボットの方が普及するのは一足早いかもしれない。

ロボットの導入には1台数千ドルという初期投資がかかるものの、配達員にかかる人件費や教育コストを考えると、費用の面でも効率的といえる。

【参考記事】

何より、この可愛らしいロボットが一生懸命運んできてくれる(ように思える)と、ピザのおいしさが増すような、心があたたまるような気持ちにならないだろうか。人間の配達員ではなく、キュートなロボットがピザを持って玄関に訪れる景色は、そう遠い未来のものではないかもしれない。

フォード社と共同で探る「自動運転車×ピザテック」の可能性

さらにドミノ・ピザの最新の取り組みでは、フォード社と共同で自動運転車による宅配実験が行われている。車体にはピザをあたたかいまま収納できる専用ケースが取り付けられており、端末に届くコードを入力すれば解錠できるというシステムだ。

コネクテッドカーをはじめ、電気自動車や自動運転といった新たな技術が次々と生まれている自動車業界。もはや自動車は単なる移動手段ではなく、人々のライフスタイルに大きな影響を与える存在へと変化している。

必ず次のパラダイムシフトが起こるであろう自動車業界に目をつけ、新たな可能性を模索するのは、さすがドミノ・ピザといったところ。

これまでも、車載システムやアプリケーションを使った新たなサービスの開発をフォード社とともに行ってきたドミノ・ピザ。たとえば、自動車の車載アプリケーションからピザを注文すると、ナビで指定した場所まで自動運転車が届けてくれる、なんてサービスの実現も期待できそうだ。

できたてのピザをより早く、よりおいしく。ドミノ・ピザの飽くなき探究心が「ピザテック」への挑戦へと向かわせているのだろう。ドミノ・ピザは、フードデリバリー業界に次はどんな革新を起こすのだろうか。

images:Domino Pizza, Starship Technologies, Youtube, Instagram

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