【Drive Japan】マツダ「CX-5」でワイナリーをめぐりながら感じた“クルマとの一体感” 

2017年2月にフルモデルチェンジしたミドルクラスSUV、マツダCX-5」が好セールスを続けている。上半期(16の国内販売データは、22827台と前年比76.8%のアップ。そんな好調の秘密を探ろうと、CX-5で八ヶ岳方面へとロングドライブに出掛けた。

初代モデルが提案した人馬一体の走りが進化

2012年にデビューした初代CX-5は、エンジンやトランスミッション、シャシーなど、クルマの概念を白紙に戻し、すべてをゼロからつくり直すというマツダの開発思想“スカイアクティブテクノロジー”を全面採用した初めてのモデル。乗用車の場合、シャシーなどのプラットフォーム(基本骨格)は23世代、エンジンは改良を重ねながら34世代にわたって使われるのが一般的だが、骨格とエンジンの進化のズレによって、完成度がチグハグな車種も少なくない。

そこでマツダは、2010年代に入り、新しい開発思想を掲げてシャシーやサスペンションといった骨格、そして、エンジンやトランスミッションといったパワートレーンを一気に刷新した。例えば、ボディはフレームワークを根本から見直して軽量化や剛性の向上を図るなど、徹底的な作り込みを実施。また、ガソリン、ディーゼルともに理想の燃焼を追求した新世代エンジンを投入し低燃費と良好なドライバビリティ、愉しい走りを実現した。

そして2017年2月。CX-5が初のフルモデルチェンジを受け、2世代目へ進化。内外装の刷新やメカニズムの改良はもちろん、車両運動制御技術にもスカイアクティブテクノロジーを新導入。電子制御デバイスでエンジン、トランスミッション、シャシー、ボディを統合的に制御することで、乗り心地の向上に加え、マツダが目指す人馬一体の走りに磨きを掛けてきた。

最新モデルの駆動方式は、エントリーモデルの2LガソリンはFF(前輪駆動のみ。その他は4WDFFが設定される。同じくエンジンは、ガソリン仕様が最高出力155馬力の2リッター直4と、184(4WD)/190馬力(FF)2.5L4ガソリン、そして、175馬力の2.2L直4ディーゼルターボが用意される。

ボディは、全長4545×全幅1840×全高1690mmと、市街地でも持て余すことのないサイズ。装備に応じて、ガソリン車、ディーゼル車とも3グレードが設定されるが、今回はレザーインテリアが備わるディーゼルエンジン搭載の最上位モデル、XD Lパッケージをドライブした。

八ヶ岳までの200kmで感じたこと

CX-5を受け取った横浜から八ヶ岳方面へと向かうルートはいくつかあるが、高速道路を優先した最短コースを進めば約180km、2時間半ほどで到着できる。今回は、横浜から相模原までを高速道路、そこから道志みちと呼ばれる峠道を経由し、まずは山中湖を目指すことにした。

新型CX-5には、ハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを変化させ、スムーズな車両挙動を実現する電子デバイス“GVC(G-ベクタリングコントロール)”が搭載されている。これは、マツダが誇る最新テクノロジーのひとつだが、正直いうと、その効果を普通に体験することは難しい。

というのも、GVCはハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを変化させ、横方向と前後方向の加速度を統合的にコントロールする仕組み。ハンドル操作の修正量や頻度を軽減するほか、乗員にかかるGの変化もなめらかにする。結果、乗員の体の揺れが減って乗り心地が向上、疲労感も軽減するというのが主な効果だ。先ほど「効果の体感が難しい」とお伝えしたのは、ドライブで疲れたという印象は感じやすいけれど、「疲れないというのはなかなか感じることができない、という理由からだ。

山中湖から再び高速道路に上がり、八ヶ岳を目指す。高速ドライブ中に改めて感じたのは、長時間の運転操作に際しては、正しく、自然なドライビングポジションが大事だということ。

意外に思われるかもしれないが、ペダルやステアリングの位置が、前方を向いた体の中心線からオフセットしているクルマも少なくない。その多くは、わずか数mmから数cm程度のズレに過ぎないが、こうした不自然な運転姿勢での長時間ドライブは、心身ともに疲労やストレスを感じやすい原因となる。

CX-5に限らず、スカイアクティブ化以降のマツダ車は、このドライビングポジションにもこだわっている。足を伸ばした先に自然に配置されている各ペダルは、コントロールしやすい角度や構造が吟味されている。また、手のひらに馴染みやすい形状のステアリング、しっかりと体をホールドするたっぷりとしたサイズのシートも、近年のマツダ車に共通する美点だ。

さて、ロングドライブも終盤にさしかかった頃、目的地周辺のワイナリーに立ち寄ってみた。実は山梨は、明治時代初期からワインづくりに取り組んできた国産ワイン発祥の地。現在では、約80のワイナリーがあり、国内消費量のうち約30%のワインを生産している。また、近年は品質も急速に向上。甲州ワインとして海外でも高評価を得るようになった。

 

【シャトレーゼベルフォーレワイナリー】

ワインの製造過程やワインセラーを見学できるだけでなく、敷地内のぶどう畑や背後の八ヶ岳、遠くに見える南アルプスというロケーションにより、ちょっとした異国情緒も味わえる。ワイナリーでしか飲めない樽出し生ワインなどを試飲できるほか、ワイン販売コーナーやチーズ工房もある

【シャルマンワイン山梨ワイナリー】

シャルマンワインは、1888年に江井ヶ嶋酒造として設立。1919年には百合ブドー酒、1921年には白玉ホワイトワインを発売した老舗の醸造所だ。1万6000㎡というぶどう農園に囲まれたワイナリーは、標高600mの丘陵地に建つ。この標高と冷涼な気候は、ワイン用ぶどうの栽培に適しており、フランス・ボルドーにも匹敵する好条件。農園では、ヨーロッパ系のワイン専用ぶどうを栽培しており、本格熟成ビンテージワインの醸造に取り組む。もちろん、敷地内の直売店では、試飲や販売も楽しめる

今回、CX-51日過ごしてみて印象に残ったのは、乗りやすく疲れないクルマだな、という思い。GVCや正しいドライビングポジションの恩恵だと思われるが、これらは数値での表現が難しく、ドライバーや同乗者の主観によっても評価が分かれる。「アノ装備が標準装備」、「燃費はこれくらい」、「充電時間はこれくらい」など、昨今は目に見える機能や分かりやすい数値がクルマの評価基準になりつつある。その一方で、先進安全装備や省エネ技術の追求はもちろん、マツダのように、操作性や乗り心地といった人の感覚”で評価が分かれる分野にも注力し、地道に改良を重ねるメーカーもあるのだ。

ではなぜ、マツダはそこまで追い求めているのか? その理由は、運転しやすくてドライバーが感じる疲労感が少なければ、結果的に、ムダな燃料消費を抑えられ、交通事故のリスクも抑えられるから。もちろんその結果、乗員はドライブを存分に楽しむことができるのである。今回、CX-5でロングドライブに出掛けてみて、改めて、クルマのこうした美点にも着目すべきではないかと痛感した。

 

photo:Murata Takayuki

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