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東京にいると忘れてしまうが、地方ではカードが使えない店舗は珍しくない。
ゆえに、約2年前私が高知県に住んでいた時、近所にある雑貨屋の店頭に「Square(スクエア)」と書かれた紙が置いてあり驚いた。
Squareはアメリカ発のモバイル決済サービスだ。これまでは百万円近い導入コストがかかっていたPOSレジ・カード決済機能を、数千円で購入できる専用のカードリーダとスマートフォンだけで実現する。リリースから3年足らずでアメリカとカナダで420万の加盟店を獲得し、その勢いのまま2015年に上場した。
Squareのような「モバイル決済サービス」の登場により、事業者は低コストでカード決済を導入できるようになり、地方にある小さな店舗でもキャッシュレスで買い物ができる時代になってきた。サンフランシスコで生まれた波が、日本の高知県にまで届いていたのだ。
事業成長に必要なツールを幅広く提供するSquare
Squareの特徴はモバイル決済に加え、「Square POSレジ」など事業者に必要なツールを取り揃えていることだ。
たとえば売上の記録・分析機能は、強力なマーケティングツールとなる。顧客の来店時間や購入されやすい商品といったその店舗独自のデータを分析することによって、数値に基づいた施策を実行できるだろう。
事業が拡大し従業員数や店舗数が増加すれば、それらを効率よく管理しなければならない。Squareには複数店舗を一元管理できる機能や、従業員ごとの権限設定や売上把握がスムーズにできる機能も備えている。
Squareにとってカード決済サービスが主軸であることは確かだが、それを起点に事業のフェーズごとに必要な機能を一通り扱っていることがポイントだ。コスト面も、カード決済における手数料が発生するのみで、分析機能や従業員管理機能などは無料で利用できる。事業者に対し導入への敷居を限りなく下げてくれている。
たとえばPOSレジにおける「ユビレジ」のように、Squareが提供する個々の機能を提供するサービスはあるが、ここまで幅広い機能を備えているサービスは決して多くない。
レシートを活用した顧客管理ツール、Squareメッセージ登場
2017年8月、Squareは日本国内のSquare加盟店に対して「Squareメッセージ」という顧客管理機能をリリースした。
Squareメッセージは「Square POSレジ」の電子レシートを活用した、コミュニケーションツールだ。事業者は電子レシートを通じて顧客の満足度やレビューを受け取り、サービスの改善に活かせる。Square加盟店であれば利用料は無料だ。
購入データを基に1対1でやりとりができるため、細かいニーズにも応えられるし、事業者側に不手際があった場合でも、ネガティブな評判が広まる前に対策を打てる。実際、サンフランシスコの調剤薬局では、会計時に顧客へメッセージを依頼することでネガティブな評判が広がるのを防いでいるという。
「Square メッセージはとても合理的な機能だと思います。私のお店ではネガティブな口コミが広がる前に、お会計のタイミングでお客様にメッセージをお願いしています(リリースより)」
小規模事業者にとっては敷居が高いNPSツールの課題を解決
顧客と良好な関係を築くことは、事業を拡大していくためには不可欠だ。商品やサービスがコモディティ化しやすい時代では、「愛着がある」ということが差別化要因にもなりえる。
現在、顧客のブランドに対する愛着や信頼度を測定する指標として広く使われているのがNPS(Net Promoter Score)だ。NPSはサービス利用者に「サービスを他人に勧めたいか」を0~10点で答えてもらい、その結果を元に算出する。AppleやAmerican Express、Walmartなど有名企業もこの指標を活用してサービスの改善をしている。
日本国内ではEmotion TechがNPS測定・改善サービスを提供していて、東京地下鉄やパーソルキャリアなど150以上の企業が導入。国内でもNPSは注目を集めているが、本格的なシステムの導入となると小規模事業者にとっては敷居が高かった。
一方でSquareメッセージはシンプルな作りではあるものの、無料で利用でき、Square POSレジを使っているユーザーにとってはなじみやすい点が特徴だ。本格的にNPSを活用したい企業では物足りないかもしれないが、小規模事業者にとっては心強いツールとなるはずだ。
「小規模事業の支援」を軸に、Squareは進化し続ける
Squareは創業期から「Make Commerce Easy – “あなたの商業活動”をかんたんにする – 」をミッションに、中小企業や個人事業主といった小規模事業をサポートしてきた。
導入企業が成長すれば手数料収入が増え、Square自体の成長にも繋がるので様々なツールを無料で提供することは双方にメリットがあるだろう。執筆時点で日本ではリリースされていないが、アメリカではSquareに蓄積された事業者のデータを元に事業資金を融資する「Square Capital」や、給料の支払いを簡単にする「Square Payroll」といった事業も展開している。
小規模事業者を支援するという軸のもと、次々と新たな施策を打ってきたSquare。今後はどのようなサービスを展開していくのか、次の一手に注目したい。
img : Square