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僕たちの世代は「自由」にアクセスしやすくなった。世界各地の情報に触れられ、移動にかかるコストも低下した。
行きたい場所に訪れることが格段に容易になっている、はずだ。だが、一方で宿泊旅行の実施率が低下しているという。
宿泊旅行者数が大きく減少、過去最低に
株式会社リクルートライフスタイルに設置された観光に関する調査・研究、地域振興機関「じゃらんリサーチセンター」が「じゃらん宿泊旅行調査2017」を実施した。
同調査は、観光などを目的とした宿泊を伴う国内旅行実態を把握するために行っており、出張・帰省・修学旅行などを除いたマーケットの動向を調べている。
じゃらんリサーチセンターは、全国1万5,555人の宿泊旅行者を対象に、2016年4月~2017年3月における国内宿泊旅行の行き先や回数、旅行費用などを調査を実施。その結果、宿泊旅行実施率は54.8%と、調査開始以来、過去最低だった。
延べ宿泊旅行者数は前年度比6.2%減の1億4,358万人、宿泊旅行にかけられた費用総額は約7兆円と、前年度比で9.0%減と減少している。なぜ、これだけ数字が減少しているのだろうか。
「誘われない」と旅行へ行く機会を失ってしまう
調査を実施したじゃらんリサーチセンターに話を伺ってみた。宿泊旅行実施率が低下している要因はどこにあるのだろうか。
「2015年度は各自治体が「ふるさと割クーポン」を発行したことが影響し、宿泊実施率が上がりました。一方、2016年度は全国的な宿泊クーポンの発行がなかったこともあり、2014年度の実施率に戻ったと考えています」
前年度比較では落ち込んだ宿泊実施率だが、前年度のクーポンが数字に影響を及ぼしていたようだ。その他に、何か減少の要因はあるのだろうか。
「旅行は『同行者』や『お金』の影響を大きく受けるレジャーです。旅行に行かない人の理由で最も多いのは『なんとなく』。一方で、旅行に行く理由として『誘われたから』という項目が上位に挙げられます。誘ってくれるパートナーや配偶者などが少なくなると、旅行に行くきっかけを失ってしまうケースが増え、実施率が減少していると考えられます」
シングル層が増え、誘われる機会が減ると旅行の機会が減る。こうした状況を変えていくためには、誘い誘われるきっかけが必要になりそうだ。「お金」という点では、平均所得の減少も背景にあると考えられるという。だが、旅行実施率が減少する一方で、増加している数字もある。
「旅行実施率の減少に連動して、『ひとり旅』は昨年まで増加傾向にありました。シングル層の増加により、複数人で行くきっかけを逸した人がひとりで行くケースが増えているためです。誰かと一緒に行きたいという意欲を持っている女性においては、今年『ひとり旅』は伸び悩みましたが、男性の20~49歳においては引き続き、伸びを見せています」
男性の「ひとり旅」は増加している。「ひとり旅」向けのコンテンツを用意することで、その需要を取り込むことは考えられそうだ。
20-30代における、他年代と異なる旅行に関するトレンドがあれば教えてください。
では、さらに20〜30代に絞って見た場合、どのような傾向が現れているのだろうか。
「20-34歳の男性は一人旅実施率がここ10年で増加傾向にあります。2016年度では29.1%となっています。20~34歳の旅行に行く男性は、その他の属性よりも旅行に対してアクティブな嗜好性が見てとれます。男性は概して旅行そのものへの関心が女性と比べると低いのですが、旅行に実際に行っているヤング層の男性に関しては、現地での体験や、周遊などに関して、むしろ女性よりも意欲的です」
20-34歳の層で旅行に行く男性はアクティブだという。この世代をターゲットにしたコンテンツを用意する際には、アクティブに旅を楽しみたい人を想定したものにすることで、需要を満たすことにつながりそうだ。
宿泊旅行の実施率の低下には、シングル層の増加による誘われる機会の減少が要因として挙げられた。一方で、「ひとり旅」は増加傾向にあり、若い男性の旅行者はアクティブに旅を楽しみたい層が多いこともデータからは読み取れるという。
今後、旅行市場は複数人での旅行のきっかけを創出すること、「ひとり旅」需要を満たすコンテンツや、男性向けの旅コンテンツを用意していくことが必要になりそうだ。
img: PEXELS