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最近、「インスタジェニック」という言葉を目にする機会が増えた。インスタ映えすることを表す言葉だ。
ミレニアル世代を中心に、この“インスタジュニックか否か”は、食事のとき、ショッピングのとき、旅行のときでも大きな判断基準になっている。今や彼、彼女たちにとって「Instagram」は日常生活に欠かすことができない——。
急成長を続けてきた「Instagram」
Instagramは、スマートフォンで撮影した写真を簡単に加工、共有できるサービスだ。2010年にサービスを開始。多様なフィルターによって“おしゃれな写真”に加工できるだけでなく、ハッシュタグ検索で“おしゃれな写真”を投稿している人とつながれるといった理由から、ミレニアル世代を中心に人気を博し、右肩上がりで成長を続けてきた。
2013年12月には最大15人に写真を送り、チャットを楽しめるプライベートメッセージ機能「Instagram Direct」をリリース。2015年5月には広告出稿が可能に。2016年8月には、投稿した写真や動画が24時間で自動消滅する機能「Instagram Stories」を実装した。
同機能によって、成長の勢いはさらに加速。Instagram Storiesはリリースから約1年でDAU(デイリーアクティブユーザー)が2億5,000万人を突破した。またInstagram自体は2017年4月にDAUが7億人を超えている。
Instagram Storiesはあるサービスをよく研究して生み出された機能だ。そのサービスとはコミュニケーションアプリの「Snapchat」。Instagram Storiesの登場によってInstagramはSnapchatと競合することになった。
しかし、SnapchatのDAUは1億6,600万人。わずか1年でInstagram StoriesはSnapchatを追い抜いてしまった。
10秒で投稿が消えるチャットアプリ「Snapchat」
Snapchatは使ったことがなくとも、同サービスを運営するSnap代表のエヴァン・シュピーゲルの名前は聞いたことがあるかも知れない。トップモデルとして知られるミランダ・カーと結婚したことで各メディアが報じていた。
彼がスタンフォード大学の学生時代にリリースしたのがSnapchatだ。Snapchatは、共有した写真や動画が“10秒間”で自然消滅するコミュニケーションアプリだ。“1度見たら、もう見られない”。このユニークな体験が、米国のティーンエージャーの間で話題となり、リリース以降、ユーザー数が拡大していった。
その勢いは加速し、2013年10月に投稿内容が24時間で消える機能「My Story」を発表。2014年6月には位置情報機能や自分専用の絵文字機能「Bitmoji」などを追加。サービスの利便性を向上させる機能を次々に実装していくことで、順調にユーザー数は増加した。
事業は右肩上がりで成長を遂げ、2017年3月には同サービスを運営するSnapは上場を果たす。しかし、意外にも上場後初の決算は赤字。米国内外のメディアにも取り上げられ、株価は20%近く急落した。
その要因となっているのが、Instagram Storiesの存在だ。“Snapchatクローン”と呼ばれる同機能が登場してから、Snapchatを取り巻く状況は激変。同サービスの成長率は82%も鈍化してしまった。
Snapchatを徹底的に真似し続けるInstagram
Instagramは「Instagram Stories」のリリースを契機に、Snapchatの機能を徹底して真似し続けた。
Snapchatがストーリーに位置情報を掲載できるようにすれば、Instagramも負けじと位置情報を載せられる「ステッカー機能」を実装。カスタムスタンプの機能が登場すれば、それも真似ている。
先行サービスであるSnapchatが成功している機能を、徹底的に真似することで、ユーザー数を伸ばしていったのだ。
LINE、SNOW、Messengerなどと並び、Snapchatは数あるコミュニケーションツールの1つに過ぎない。特徴を強く立たせるなど、明確に立ち位置を表していかなければ存在感を発揮することは難しい。
一方、Instagramは写真SNSとしては最大規模の月間アクティブユーザー数7億人を誇る“プラットフォーム”だ。写真を見る、コミュニケーションをとる、加工する、載せる。すべてInstagram上で実現されている。ここに特徴的な機能を取り込まれてしまうと、機能に魅力を感じていたユーザーは使い慣れたプラットフォームに流れてしまう恐れがある。
成長が鈍化したSnapchatは、新たな展開を始めている。2017年6月にはユーザーの位置情報を追跡できる機能「Snap Map」を実装。7月からはアプリ内ニュース番組「Stay Tuned」の配信を開始。単なる写真・動画コミュニケーションアプリからの脱却を図ろうとしている。
真似をしながら、独自の進化を遂げる
他方でInstagramは、2016年11月にリアルタイムでフォロワーに対して動画を配信できる「ライブ配信機能」を開始したり、ライブ配信の動画をInstagram Storiesに共有できるようになったことも発表したり、SNSとして独自の進化も遂げている。
「Move fast with stable infra(安定したインフラですばやく動け)」——これはInstagramの親会社であるFacebookが掲げるモットーだ。Facebookは、素早く行動し、そこから何か学ぶことを大事にしている。それが他社の真似であったとしてもだ。
後発ながらInstagram StoriesがSnapchatを上回ったのは、Instagramに盤石なユーザー基盤があったことはもちろんだが、成長のために素早く動き、そこから学ぶ。このサイクルを繰り返したからこそ、加速度的に成長していったのではないだろうか。
過去にAppleの創業者であるスティーブ・ジョブズが「素晴らしいアイデアを盗むことに我々は恥を感じてこなかった」という言葉を残しているように、模倣の先にイノベーションのヒントが眠っているものだ。