ミレニアル世代は、地域に貢献する企業で働きたい。Facebookがシリコンバレーで街づくり

新進気鋭のスタートアップが集う“イノベーションのハブ”としてのシリコンバレーはいずれ過去のものになるかもしれない。

数年前よりシリコンバレーではIT企業の進出に伴い、住宅価格の急騰や通勤者による交通混雑が深刻な課題となっていた。2013年頃にはGoogleを含むIT企業の通勤バスに対する妨害行為も発生。地域住民との軋轢が露わになった。

住宅価格や生活費の高騰は優秀な人材の流出を招くレベルまで進行している。Forbesによると、高い報酬を受け取るIT企業の従業員にとってもシリコンバレーの生活コストは耐え難く、ネヴァダやポートランド、シアトル、ニューヨークやボストンに人材が流れつつあるという。

地域住民だけではなくシリコンバレーの企業群にとっても、住宅価格の高騰といった地域課題は解決が急務だ。

Facebookがビレッジ「Willow Campus」を建設する

IT企業の集中によって起きた課題解決に向け、Facebookは「Willow Campus」計画を発表した。同計画では、本社の位置する米カリフォルニア州メンローパークに住宅1500戸を備えたビレッジ「Willow Campus」を建設する。ビレッジの広さはおよそ12万5千平方フィート(約1万1600平方メートル)、住宅以外に日用雑貨店や小売店、オフィス施設が並ぶという。

Willow Campus計画は2021年に完了を予定しており、すでにメンロパークの行政と話し合いを重ねている。建設予定の住宅1500戸のうち15%は市場価格よりも安い価格で一般向けに提供する。加えて、交通網の整備に数千万ドルの支援を行う。

Facebookは昨年より地元の団体と連携し、1850万ドル規模の基金「Catalyst Housing Fund」を設立し、安価な住宅の提供を支援してきた。メンロパーク市長のKirsten Keith氏は先日「より多くのテック企業が、Facebookのように安価な住宅を提供する取り組みに参加してほしい」とツイートしており、同計画に期待を寄せている。

Facebookは地域課題の解決だけでなく、「物理的なスペースを提供することでコミュニティ内の活性化に貢献したい」と述べている。同社はこれまでもファーマーズ・マーケットやイベントの開催、地元高校生向けのインターンシップ・プログラムを提供してきた。Willow Campusは、同社と地域コミュニティとの交流を更に促進するはずだ。

働く環境と組織の評判、「働きたい」と思われる企業の条件

従業員と地域コミュニティ双方にとって魅力的な環境を用意することは、人材を獲得したいIT企業にとって今後不可欠な取り組みになるかもしれない。

国内では「面白法人カヤック」が、本社の位置する鎌倉で地方創生・地域貢献活動に積極的に取り組んでいる。地域のゴミ出しアプリや鎌倉専用クラウドファンディングサイトの運営、地元海水浴場のマナー向上プロジェクトなど、地域をよりよくするためのプロジェクトを地元コミュニティと連携しながら実施。

最近では、社員の鎌倉移住を促進するため、住宅手当の支給だけでなく、内覧と面接を同時に行うなど独自の活動を行っている。人材を惹きつけ、地域との結びつきを強めるのはIT企業にとっても必要なことになりつつある。

PwCが日本を含む世界各国のミレニアル世代4364人を対象とした調査によると、ミレニアル世代は画一的で無機質なオフィスの代わりに「魅力的で心地よく、刺激的な空間で働ける組織」を求めているという。

“組織の評判”もミレニアル世代が仕事を選ぶ上で重視している要素だ。同調査では「自身のキャリア上の成長」に次いで、36%ものミレニアル世代が現在の仕事を選択する際に「組織の評判」を考慮した項目に挙げている。また「自分たちの仕事が社会にとって意義があるか」という点も重視する傾向がみられた。

社会からポジティブな評判を得ている企業を選びたい。そんな価値観をもった世代が米国ではすでに労働人口の大半を占めている。今後、米国企業とくにシリコンバレーのIT企業を中心に、地域と良好な関係を築き、コミュニティから尊敬を勝ち得る取り組みがより重要視されていくだろう。

img: Facebook

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