イオンやセブンイレブンなど小売店や卸売業者が独自で企画、販売を行う「プライベートブランド(PB)」。近年、節約志向の高まりから、全国的に知名度のあるナショナルブランド(NB)よりも、プライベートブランドが人気を集め始めている。

実際、富士経済が2013年に発表した情報によれば、プライベートブランド食品市場の規模は2017年に3兆2093億円を突破する、と予測されている。

この発表にも含まれている通り、これまでプライベートブランドは食品が中心となっていた。最近になって、アパレルのマーケットプレイスがプライベートブランドを立ち上げる動きも出始めている。

「BUYMA」がオリジナル水着ブランドを立ち上げ

先日、ファッション通販サイト「BUYMA(バイマ)」が、“潮焼けした髪と小麦肌に似合う水着を日本の女の子に” をコンセプトに掲げるオリジナル水着ブランド「Salty Beach Style(ソルティビーチスタイル)」を立ち上げた

同ブランドは「ヒップのカットが大胆すぎる……」「サイズが合わない……」といった、海外ブランドの水着にありがちな問題を解消すべく、サイズの調整がしやすく体型を選ばないデザインの水着を販売。現在、レースアップビキニ、ボタニカルハイネックの2種類の水着が展開されている。

BUYMAは、世界135カ国に住む約9万人(2017年1月31日時点)のパーソナルショッパー(出品者)から、世界中のさまざまな商品を購入できるマーケットプレイス。日本にいながら、国内未上陸ブランドの商品などを購入できるのが魅力だ。

マーケットプレイスであるBUYMAが、プライベートブランドを立ち上げた理由——それは顧客との接点を増やすためではないだろうか。マーケットプレイスの事業者は自社の商品を持っていないため、顧客との接点を築きにくかった。テレビCMによって認知を拡大し、利用者を増やす。この方法が一般的で、自社からアプローチすることは難しい状況にあった。

ただ、プライベートブランドを立ち上げ、自社商品を開発すれば、そのブランド、商品が新たなタッチポイントとなり、利用者と関係性を築くことができる。だからこそ、BUYMAはプライベートブランドの立ち上げに踏み切ったのではないだろうか。

もともと、BUYMA自体に「水着・ビーチグッズ」のカテゴリーがあり、さまざまなブランドの水着が出品されていた。どういった商品が売れるのか、豊富なデータが蓄積されていたからこそ、まずは水着だったのだろう。

他のマーケットプレイスの動き

ブランドを立ち上げる動きは、BUYMAに限定されたものではない。ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する、株式会社スタートトゥディの代表取締役・前澤友作氏は自身のTwitterで「プライベートブランドの立ち上げ準備を行なっている」ことを公表している。具体的なリリース時期は未定だ。

Amazonベーシック

こうしたマーケットプレイスの事業者が、プライベートブランドを立ち上げる事例の先駆けとなっているのは、Amazonだ。同社は2009年11月5日にプライベートブランド「Amazonベーシック」を立ち上げ、DVD・CDメディア、ネットワークケーブルなどの製品の販売を開始した。

また、今年に入ってAmazonは密かに7つのファッションブランドも立ち上げている。紳士靴からレディースカジュアル、アクセサリーなど対応している領域も幅広い。

消費者は安く購入でき、事業者は新たな接点を持てる

プライベートブランドの商品は消費者からしてみれば、ナショナルブランドの商品よりも安いため魅力的だ。一方、事業者側は商品自体に付加価値をつけ、ブランドイメージの向上を図ることができる。とはいえ、メリットばかりではない。もちろん、プライベート商品は返品することもできないため、在庫リスクを抱えることになる。

そうしたリスクを抱えながらも、マーケットプレイスの事業者がプライベートブランドを立ち上げる意図は、利用者との接点を築くだけでなく、収益構造を変化させる狙いもあるだろう。

マーケットプレイスの事業者は、通常のアパレルブランドとは異なり、さまざまなブランドの商品を販売しているため、データを蓄積しやすい。顧客はどんな商品を求めているのか、どんな商品を購入しているのか、通常のアパレルブランドよりも顧客のニーズが把握しやすい、というわけだ。

そのデータを活かし、顧客ニーズの高い商品を作り、販売する。自社内で製作から販売までを手がけることで売値もコントロールすることができ、利益率も高められる。

BUYMAのようなマーケットプレイスは取引金額の一定割合を徴収したり、振込手数料を徴収したりするのが、主な収益モデルだった。この手数料ビジネスから脱却し、新たな収益源を作り出すことがプライベートブランドを立ち上げる目的ではないだろうか。

画像出典:Salty Beach StyleAmazon