Airbnbへと挑む日本のプレイヤーたちが続々。民泊新法がもたらす業界変化

日本政府観光局によれば、2016年の過去最高の訪日外客数の数は2,400万人を越えた。前年比20%の伸びを見せる訪日外客数に対して、日本は宿泊施設の数が十分とは言えない。宿泊施設の受け皿として期待されているのが、民泊だ。

民泊物件データ検索サイト「SPIKEデータ」によると、2015年の民泊市場規模は約130億円にのぼり、「東京五輪」が開催する2020年までには2,000億円前後まで急成長すると予測されている。

まさに急成長中の市場に対して、多くの企業が参入しようという動きを見せている。その背景には、法律の変化がある。

民泊新法の成立により市場参入の動きが加速

これまで民泊事業は、既存の法規制との戦いを余儀なくされていた。話題を集める市場ながらも、参入へ向けて足踏みする企業は多かっただろう。

しかし、状況は変わった。2017年6月9日に「住宅宿泊事業法案」が成立し、続々と日本の企業も動きはじめてきた。

これまでは事業者が、宿泊料を受け取り、人を宿泊させる民泊を行う場合、複数の行政機関が絡む旅館業法による許可を受ける必要があった。住宅宿泊事業法案が成立したことにより、都道府県知事に住宅宿泊事業者として届け出を行えば、180日を超えない範囲で民泊の提供が可能になる。

順調な伸びを見せる訪日外国人の数や、2020年に差し迫った東京オリンピック、さらに今回の住宅宿泊事業法の成立を考慮すれば、民泊市場がこれまでに以上に拡大していくことは、想像に難くない。

民泊市場に新たに参入する企業たち

日経コンピュータによる深山忠広副社長への取材で、アパート賃貸会社大手のレオパレス21も民泊事業への参入を本格的に検討していることが、明らかになった。

家賃の電子決済システムや、部屋の鍵をスマートフォンで開閉できるスマートロックを、自社が管理する新築物件に導入し始めている同社は、スマートホームの機能を有効活用しながら民泊事業へ参入していくと考えられる。

レオパレス21のように、自社で不動産を管理する賃貸会社が、民泊事業へ参入する流れは当然の流れだと言える。これまで蓄積した賃貸物件の管理ノウハウによる効率的な経営や、適切な人数の受付スタッフ配置によって浮いたコストを、宿泊料に還元。

さらに、長期宿泊者の要望に応える1ヶ月以上の中期契約や、快適な宿泊環境へのカスタマイズなど、数多くの自社物件を管理するという強みを活かして、宿泊者の細かいニーズに応えることが可能だ。

民泊の仲介プラットフォームを提供する日本企業も

民泊事業へ参入する企業のなかには、不動産関連の会社だけでなく、大手IT企業である楽天株式会社の姿もある。

6月22日、楽天は株式会社LIFULLと、共同出資の子会社「楽天LIFULL STAY株式会社」を設立したと発表。楽天の持つIT技術やネットワーク、LIFULLの持つ不動産情報、それぞれの強みを活かして施設提供者と、宿泊希望者をマッチングさせる独自のプラットフォーム「Vacation Stay(仮称)」を提供する。

楽天の自社サイトによると、同プラットフォームは、訪日旅行客の増加による宿泊施設数の不足を解消する目的はもちろん、人口減少や既存住宅が活用されないまま放置されることによる空き家の増加問題を解消する狙いもあるという。

7月3日、また楽天LIFULL STAYは、バケーションレンタルに特化した大手民泊サイトHomeAway(ホームアウェイ)と業務提携を行うことも発表。HomeAwayを通じて、世界中の利用者に情報を提供することで、今後さらに拡大していくであろうインバウンド需要に応える狙いだ。

住宅宿泊事業法の成立により事業者が参入しやすくなったいま、レオパレス21のように、物件を管理する賃貸会社のみならず、民泊事業参入を発表した楽天をはじめ、旅行関連サイト等で培ったプラットフォーム運営ノウハウ等を持つIT企業が、民泊市場に参入する可能性も考えられる。

民泊に参入する企業は、大きく分けて不動産管理に強みを持つケースとプラットフォーム運営に強みを持つケースの2つに分けられる。レオパレス21は前者で、楽天LIFULL STAYは後者だ。物件を持つ側は管理コストが高くなる一方、提供するサービスの質をコントロールしやすい。プラットフォーム側は、物件のコントロールは難しいが、管理にかかるコストは低い。

このように、どのような事業を展開してきたかで、民泊領域における勝負の仕方は変わってくる。Airbnbなどの既存プレイヤーに加えて、物件を持つ不動産業者、プラットフォームを持つ企業も進出し始めている民泊市場の動きに注目が集まる。

img:Pixabay, Rakuten LIFULL STAY

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