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今、自分の住んでいる場所が働き、暮らす上で果たしてベストなのだろうか。
リモートワークが可能な職種も増え、海外移住に関する情報が溢れる昨今。ネット上では海外に拠点を移し活躍する人達が、個人に合った環境に移るメリット、移動の自由を享受する豊かさを説いている。たとえ、海外に強い興味がなくとも、別の土地で暮らす自分の姿がふと頭をよぎることがあるかもしれない。
世界一周の旅の後、二度目の起業に挑戦している株式会社スクールウィズ代表取締役の太田英基氏も「頭の中にある日本地図を世界地図まで広げよう」と述べており、世界の中から目標達成のために適した場所を選ぶ重要性を指摘している。
では、自分に適した場所とは、どう探したらいいのだろうか。
最適な移住先選びを手助けするマッチングサービス「Teleport」
エストニア発のマッチングサービス「Teleport」は、世界に出たい人のためのサービスだ。個人にとって最適な移住先を教えてくれる。2014年にローンチした同サービスでは、ユーザーが求める生活の質や金銭的なニーズを各都市のデータと照らし合わせて、ベストな移住先をリストアップしてくれる。
ユーザーは最初に自身が重要視している項目を選ぶ。「アクティブなスタートアップシーン」、「車の不要な生活」、「ヘルスケア」など、都市の経済や交通、制度面まで、項目は多岐にわたる。
必要な項目を選んだ後は、現在住んでいる場所、家賃の予算、現在の職種と経験年数、給料の額面を指定する。
入力が完了すると、最適な都市が上から順に並ぶ。都市ごとにはじめに選んだ項目とのマッチングスコア、スタートアップシーンの盛り上がり、現状の生活費の比較が確認できる。
各都市名をクリックすると、より詳細なデータを閲覧できる。マッチングスコアの内訳、現在住んでいる都市と生活費の比較、生活費、求人市場、スタートアップシーン、住宅事情、コワーキングスペースの数など、具体的な数値が表示される。
元Skypeエンジニア達が物理的な移動に関わるサービスを開発する理由
「暮らし働く上で最適な場所への移動」を掲げるTeleportには、CEOのSten Tamkivi氏をはじめ、元Skypeのエンジニアが多く所属している。
彼らが物理的な距離に囚われないコミュニケーションを実現したSkypeを経て、物理的に人々を移動させるためのプロダクトを開発するのはなぜなのか。
創業時のブログでSten氏は以下のように語っていた。
仕事は場所に縛られなくなった一方、生活にかかるコストは物理的な場所に大きく依存している。住居費、交通費、養育費、教育費、ヘルスケア。これらのコストやサービスの中身は住む場所によって規定される(中略)
自由に移動できる生活は素晴らしいが、うんざりするような膨大な選択を乗り越えなければいけない。これがTeleportの開発に至った理由です。これからのデジタルノマドが移住先を決定するプロセスをサポートしていきたい
またSten氏によると、Teleportが対象としているのは“移住する可能性の高い”ミレニアル世代。同社が可能性を判断する基準としたのは、知識労働者であること、パスポートを所持していること、二ヶ国語話者(英語が母語でない場合)であることの3つだ。
実施した調査では移住する可能性が高い属性を備えている人はおよそ3.5億人に上った。また、8割以上がすでに他の都市への移住を検討しているという結果が明らかになったという。
「海外で暮らしたい」は現実的な選択肢になる?
海外留学者数の減少を根拠に「最近の日本人は内向き」と評されることもある。一方、海外在留邦人数調査統計によると、長期で海外に滞在する日本人の数は調査を開始した昭和43年以降最多を記録している。
また、DeNAトラベルが10代から60代を対象とした調査でも 74.9%が「海外移住をしてみたい」と回答。その理由として「海外の穏やかな働き方が羨ましかった」が多く挙がったという。
ITやアカデミックの分野では、働き方だけではなく給料や待遇の差が話題になることも多い。今年に入ってからは、中国企業ファーウェイの新卒向け求人において、エンジニア職の初任給が40万円を超えていることがニュース等で取り上げられた。また、一橋大学教授の川口康平氏は、給料を理由に香港科学技術大学に移籍する旨をツイートし、インターネット上では共感や嘆きと共に拡散された。
国内の労働環境や文化に不満を抱き、より豊かな生活を手に入れる手段として海外移住を検討する。そんなステレオタイプな海外への憧れではなく、現実的で、前向きな理由で海外移住を選択する人達は今後増えていく。
Teleportのように具体的な検討事項とデータを駆使してベストな都市を導き出すサービスは、よりよく生きるための戦略として、移住を検討する人達にとって、力強い味方になるはずだ。
img: Teleport