未知領域のデータが社会を変えるー人工知能とドローンがもたらす未来

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「ドローン」という言葉が世の中に広く知れ渡った2015年。企業、投資家、行政などさまざまなプレーヤーがドローンに注目し始めた年だったといえる。あれから2年が経過し、2017年となったいまドローンを取り巻く状況は大きく変化している。

そこで今回はドローンのグローバル市場を俯瞰しながら、ドローンが現在いる位置を確認し、今後ドローンがどのように進化・発展していくのか考えてみたい。

産業ドローンの世界市場規模はどれくらい

ドローンは軍事、消費者、産業の3市場に大別されるが、今回は普段の生活に大きな影響を与える産業ドローンにフォーカスしたい。

産業ドローンの市場規模はどれほどなのだろうか。

PwCが2016年5月に発表したレポートによると、世界の産業ドローン市場は1270億ドル約14兆3000億円と推計されている。これは実現された市場規模ではなく、さまざまな分野において実際にドローンが最大限活用された場合に達成される予想市場規模(addressable market value)だが、規模感をイメージする上で参考になる数字だろう。

1270億ドルの内訳で、最大を占めるのがインフラだ。その規模は452億ドルに達する。次いで農業324億ドル、輸送130億ドル、警備100億ドル、メディア・エンタメ88億ドルなどと続く。

インフラとは具体的に建設やトンネル工事のことで、測量、プロジェクト進捗の確認、建物検査など多岐にわたるシーンでドローン活用が考えられている。農業では、作物の発育確認や灌漑時期分析などで活躍が期待されている。

またゴールドマンサックスの推計では、2016年から2020年にかけて産業ドローン市場に130億ドル相当の資金が投じられる見込みという。産業別でみると、最大市場は建設で、次いで農業、保険、石油・ガスなどが続く。

このほかにも産業ドローンに関してさまざまレポートが出ているが、インフラ分野と農業分野の比率が大きいという点で大方の見方は一致しているようだ。

これはインフラ・農業分野企業のドローン導入需要が高いということでもあるが、その理由としては、これまで人手で何日もかかっていた作業を数時間に短縮したり、危険な場所での作業をドローンで代替したりするなど、大幅な作業効率改善・コスト削減を実現できるからだ。

ざっくりとではあるが世界の産業ドローン市場の規模感を紹介してきたが、今後これらの市場規模が現実のものとなるためにクリアしなくてはならない技術的・法的な課題は少なくない。次のセクションでは、産業ドローンに関わるプレーヤーたちがいま何に注目し、どのように取り組んでるいるのかをお伝えしたい。

2017年、産業ドローンのプレーヤーたちが抱える課題とソリューション

産業ドローンのいまを知る方法の1つは、産業ドローンの見本市を見てみることだろう。

2017年6月、ベルギー・ブリュッセルで開催された産業ドローン見本市「Commercial UAV Expo Europe」では欧州を中心とした産業ドローンプレーヤーたちが一堂に会し、さまざまな課題とソリューションについて議論した。その中でも特に注目が集まったトピックの1つが「データ統合」だ。

ドローンには現時点ですでにカメラや各種センサーを搭載することが可能で、ドローンを飛ばして画像などさまざまなデータを取得することができる。しかし、それらのデータはそのままでは意思決定に使うことはできない。データを整理し、分析・解釈するという作業が必要になるからだ。

データは取得できるが、そのデータをスムーズに意思決定に生かすことができていない。インフラ、農業、石油・ガスなど分野横断した主要課題として位置付けられている。

この課題に対して先進的な取り組みをしているのが、ロンドンに拠点を置くSky−Futures だ。同社はドローンによって収集されたデータを機械学習などの人工知能技術を使って統合・整理する試みを実施している。

ドローンによって集められたさまざまなデータを統合・整理するのは非常に手間のかかる作業だが、この作業が利益に直結することはない。これを機械学習でスムーズに実施し、データ分析・解釈というより価値の高いタスクに時間を割り当てられるようにしようというものだ。

Sky−Futuresが得意とするのは、海上の石油・ガス掘削リグやパイプラインの点検だ。掘削リグやパイプラインは海上にあるため傷みやすく、常時点検が必要になる。巨大な掘削リグを人手で点検するとなると膨大な時間が費やされるのは想像に難しくない。

しかし、ドローンであれば効率的にデータを集めることが可能となる。高所など危険を伴う場所もドローンを使えば、人員を危険にさらす必要もなくなる。また大幅なコスト削減も期待されており、世界の石油・ガス大手各社がSky−Futuresのサービスを利用しているという。

ドローンを使うことの強みは、データ収集コストを大幅に下げられるだけでなく、データ収集の頻度を高め、これまで難しかった場所でのデータ収集ができるようになることだ。つまり、ドローンを使うことで現実世界の未知なる領域でのビッグデータが取得可能ということになる。「新しい石油」と呼ばれることもあるデータだが、ドローンが集めたデータは社会にどのような変革をもたらすのか、今後の展開に注目していきたい。

img:Commercial UAV ExpoSky-Futures

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