ようこそ、東京へ。コワーキングスペース「WeWork」が上陸間近 #weworktokyo

「Welcome, Tokyo Creators」

日の出駅からすぐの印刷工場をリノベーションした空間「TABROID」に詰めかけた人々を、こんな言葉が出迎えた。

世界中で13万人以上のメンバーが加入するコワーキングスペース「WeWork」の共同創業者来日イベントが開催されると知り、大勢の人々がこの場所に足を運んだ。

イベント開始前には行列ができ、ライブイベントのような混雑具合。WeWorkというブランドへの注目度の高さが伺える。

「WeWork」とは何者なのか

WeWorkの日本上陸が近づいている。Bloombergの報道によれば、2018年末までにスペースを10-20カ所開設する計画だという。

WeWorkは日本上陸に向けて、準備を整えている真っ最中だ。2017年3月にWeWorkに3億ドル(約340億円)を出資したソフトバンクとともに、50%ずつ出資する合弁会社WeWork Japanの設立を7月18日に発表した

WeWorkJapanの最高経営責任者を務めるのは、2010年のWeWork創業直後に入社し、同社で初めての最高執行責任者に就任したChris Hill氏。元COOが日本での事業展開の責任者を務めることから、日本への力の入れようが伺える。

上陸に向けて様々なニュースが飛び交い、熱量が高まりつつある中で、イベントは開催された。WeWorkの共同創業者であり、Chief Creative OfficerであるMiguel McKelvey氏も来日するとあって、人々の注目度は高かった。

クリエイターのためのプラットフォームとしての役割

なぜ、ここまでWeWorkの日本上陸は注目されているのだろうか。それは、彼らが単なるコワーキングスペースを運営する事業者ではないからだ。

WeWorkは2010年に、Adam NeumannとMiguel McKelveyによって設立された。彼らが最初にコワーキングスペースをオープンしたのは、ニューヨーク市。

ニューヨークのSoHoからWeWorkはスタートした

かなりのスピードでWeWorkは規模を拡大し、現在では世界15カ国49都市に155カ所以上のスペースがあり、13万人以上のメンバーが参加している。

入居しているのは、起業家やスタートアップ企業、フリーランスだけではない。Fortune 500の企業の10%以上がWeWorkのメンバーとして登録している。WeWorkに入居することで、他の企業とのコラボレーションやイノベーション創出を行うためだ。

コワーキングスペース内でも様々なイベントが開催され、入居者同士の交流が生まれやすい仕掛けが実装されている。“つながり”を生むためのパーティーやセミナーを開催することで、WeWorkのコミュニティとしての価値を高めていく。

中でも特徴として知られるのは、WeWorkの入居者のみが使えるアプリだ。このアプリを使うと、世界中からWeWorkメンバーを探し、個別に連絡を送ることができる。実空間だけではなく、アプリで世界中のメンバーをつなぐことで、コラボレーションの可能性は広がる。ハードとソフトを組み合わせて、サービスを展開しているのが彼らの強みだ。

最近では、WeWorkは「働く」だけではなく、生きることそのものをサポートする企業に進化しつつある。働くことと暮らすことの境目はもはや曖昧だ。サービスを提供する側も、その前提に立って価値を生み出していかなければならない。

こうした考えからか、WeWorkはコワーキングスペースに加えて、共同アパートメント「WeLive」を運営している。働くを中心とした空間だけではなく、生活を中心とした空間であり、その中でつながる人々とのコミュニティ形成を主眼においている。

2017年5月にはWeWorkのフィットネスビジネスへの参入がQuartzによって報じられた。WeWorkは「WeWork Wellness」というアプリを提供しており、少しずつその兆候をみせていた。

WeWork Wellnessを使用すれば、WeWorkの共有スペースや屋上で開催されている、ヨガやピラティス、キックボクシングなどのクラスへの参加予約ができる。仕事をしていく上で、健康な身体を維持することは必要不可欠だ。

WeWorkは「Do What You Love」というブランドメッセージを打ち出している。今回のイベントでも、スペース内の様々な場所でその字面を見かけた。

「あなたが好きなことをやりなさい」

そんな言葉からは、働く環境を整え、働くことを楽しもうというメッセージが受け取れる。

人々の“つながり”がWeWorkの価値になる

話をWeWorkの上陸に戻そう。

ソフトバンクによる法人向けイベント「SoftBank Vision 2017」の基調講演にもMiguel McKelvey氏は登壇し、「私たちはワークスペースを通じて起業家をサポートし、世界をより良いものにしたいと考えている。ソフトバンクとはその思いを共有できる」とコメントしている

ソフトバンク会長兼社長の孫正義氏は合弁会社設立のリリースにて、次のようにコメントしている。

「素晴らしいビジョンを持つAdamと優秀なWeWorkのチームは、最新テクノロジーを活用した科学的なアプローチで従来のワークスタイルの概念を覆し、世界中の次世代のクリエイターに無限の可能性を広げてきました。私たちは日本の人々にも、より多くの可能性の場を提供していきたいと考えています」

イベントの最後に、Miguel McKelvey氏の簡単なスピーチはあったものの、その他に何か特別なコンテンツがあったわけではない。

しかし、会場にはさまざまな人々が集い、そこで交流が生まれていた。久しぶりに会う知人とも話は弾み、新しい仲間だってできたかもしれない。

それは入居者同士の“つながり”を生み出すことに注力してきたWeWorkらしいイベントとも言えるのではないだろうか。

会場ではDJのほか、ライブペインティングも行われていた

The Wall Street Journalによれば、WeWorkは7月に新たに7億5000万ドル(約833億円)の資金調達を実施。その企業価値は210億ドル(約2.3兆円)を超えた。

2018年初頭のコワーキングスペース開設に向けて、WeWorkは次に何を仕掛けてくるのだろうか。WeWorkの動きからは当分目を離せそうにない。

img : WeWork, WeLive,WeWork Wellness

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