ファクトリーオートメーション。これは受注、生産、出荷といった工場での一連の作業工程をロボットやセンサ、情報システムなどによって自動化するシステムのことだ。同システムの登場により、工場の作業工程には大きな変化が起きている。
しかし、工場で働く人はどうだろう。いまだにシートやストップウォッチといったツールを使って、作業の進捗状況を確認したり、生産性の向上を図ったりしている。アナログな作業環境をデジタル化し、工場の現場で働く人の生産性を向上させることを目的としたソフトウェアプラットフォームがある。Tulipが手がける「Manufacturing App Platform」だ。
これまで工場内で存在していたものの連携できていなかったセンサー、カメラ、IoTデバイスなどを相互に通信させることで、作業指示の自動伝達、データ収集、品質管理、マシンのモニタリングやトレーニングなどを可能にする。
同社のHPにて発表しているデータによれば、Manufacturing App Platformを使うことによって、品質問題が60%軽減、トレーニングコストが56%削減、監査時間が65%短縮するなど、工場の生産現場における“不”を劇的に解消している。
国内メーカーの工場でも進みつつある、人と機械の共存
こうした、工場で働く人の生産性を向上させる取り組みは、国内でも少しずつ広まっていっている。例えば、自動車部品メーカーのデンソーは「ダントツ工場」を標榜し、IoTで世界130工場をつなぎ、2020年まで2倍にする目標を掲げている。具体的には、IoTを活用し、工場内の「予知・予兆管理」や「重点管理」を行いやすくするという。
さらに、自動車部品メーカーのジェイテクトでは「生産マネージメントシステム」を開発。工場の現場で働く人の習熟度を勘案し、最適な作業を行わせることで生産性の向上やリードタイムの短縮を目指す。また、どの設備で何が起きているかをレイアウト表示のアドオンで即座に確認、対応ができるという。遠隔オフィスで生産現場の状態を把握して計画の見直しを行うといったことも可能だ。
ここ数年で、変化の兆しを見せ始めている工場の生産現場。「機械が人の仕事を奪っていく」という声もほうぼうから聞こえてくるが、単純な作業が自動化されることによって、現場の人はよりクリエイティビティの高い仕事に取り組めるようになるのではないだろうか。
IoTを産業利用する、「IIoT(Industrial Internet of Things)」。既存の制御・運用の仕組みに情報技術(IT,ICT)を組み合わせることで「スマートファクトリー」が実現するようになり、日本が世界に誇る生産方式「カイゼン」が強固なものになっている。
また、2017年3月20日に、日本政府は産業の新たな姿を示すコンセプトとして「Connected Industries」を発表した。この方針からも分かるように、今後の工場は人と機械の共存が進んでいき、新たな付加価値が創出されやすくなっていくのではないだろうか。
img:Tulip