世の中には、情報もモノも氾濫している。現代において、知ることや所有することの価値は、相対的に低下している。

実際に足を運び、体験することの価値が人々の間で高まってきた。音楽市場でのライブ需要の増大や、アウトドアの盛り上がりなどはその一例だろう。

こうした「体験」が重視される波は、「贈り物」にも現れているようだ。

体験ギフト利用者が急増

ソウ・エクスペリエンス株式会社が提供する体験ギフト利用者が2017年3月に累計で20万人を突破した

当社体験ギフトの利用者累計数

2017年の「母の日」商戦において、同社の体験ギフトの販売個数は昨年同期比の約240%、2013年同期比の約760%を記録。同社は、ギフト市場における「体験」の存在感が、2015年から増しており、近年利用者が急増していると見ているという。

FOR2BROWNパッケージ

ソウ・エクスペリエンスが提供する体験ギフトは、贈られた人がさまざまな体験をできるというギフト商品。体験に含まれているのは、レストランやカフェでの食事、リラクゼーション施設での施術、陶芸などのものづくり教室でのワークショップ、音楽教室、アウトドアアクティビティ、フィットネスなどさまざまだ。

ソウ・エクスペリエンス代表取締役の西村琢氏は、体験ギフトの市場に関して次のように語る。

西村氏「国内の体験ギフト市場は、まだまだ大きく伸びていくと思います。これまでの成果から、私たちは体験ギフトが多くのギフトを探している人々にとって確かな意義をもった商品だという確信を抱きました。私たちは『体験ギフト』や『体験を贈ること』が、アクセサリーやスポーツ用品、食品などと並ぶ贈り物の当たり前の選択肢の一つになるはずだし、自分たちが牽引して成し遂げられるだろうと思って日々の仕事をしています」

同社では、体験ギフトを選択肢の一つにすることを「体験ギフトのジャンル化」と呼んでいるという。最近では、百貨店のフロアガイドに体験ギフトが登場したり、検索画面に「体験」と入力すると「ギフト」がサジェストされるようになるなど、少しずつ体験ギフトはジャンルとして確立されてきている。

西村氏「温泉や旅行を贈ったり、エステ券や遊園地、肩たたき券もそうかもしれませんが、『体験を贈る』市場は元々存在していました。でも、それを改めてギフトに相応しい体験をセレクトしたり、ギフトに相応しいパッケージに仕立てることで、あらゆる体験がギフトとして流通できるようになりました。アイデア次第で「体験ギフト」の可能性は無限にあるはずなので、自分たち自身で限界を設けず、市場の可能性を少しでも広げていけるよう動いていくつもりです」

世界でも「体験」の価値が高まる

ソウ・エクスペリエンスは、イギリスで発達していた体験ギフトを見よう見まねで2005年にスタートさせたのが最初だったという。

西村氏「体験ギフトも2000年代前半から世界的に広がり、当初盛んだった欧州のみならず、北米や東南アジアでもプレイヤーが増えています。各国で贈り物文化は異なるため、そのまま参考になるわけではありませんが、文化や位置付けは違えどフランスにある体験ギフト最大手の会社の売上が1,000億円近くまで伸びて来ているのは刺激を受けますし、他の多くの国々の状況を見ても体験を贈る市場の拡大が世界的な潮流であることは間違いないと思っています」

ギフトのみならず、アクティビティ予約など、「体験」をキーワードにしたスタートアップは多く登場している。シェアリングエコノミーのリーディングカンパニーとして知られるAirbnbも、体験を軸にした新サービスの提供を始めている。体験を重視する動きが世界的に広がっているのに伴って、体験ギフトの流れも世界的に広がっているようだ。

Airbnb trip

ソウ・エクスペリエンスは、海外の動きに刺激を受けつつ、国内で「体験ギフトのジャンル化」の達成を目指して活動を続けていく。

西村氏「幸い今、売れ行きそのものは好調に推移しているので、これからはより一層『贈り物に相応しい良い体験とは何か』を考え、パートナーである体験施設と共に具現化したり、自分たちの手で新たな体験を創出していきたいと考えています。

体験ギフトを手がける私たちが手がける体験となれば、必ず『それは贈りたくなる体験か、そして贈られたら嬉しい体験か』でなければなりません。そのため、質を厳しく判断する必要がありますが、それを乗り越えて世に出すものは人々の支持を集められると予測してるからです。

私は高校生の頃に出会った株式投資や大学生の頃に出会ったレーシングカートやキャニオニングでかなり人生揺さぶられましたが、そんなスペシャルな体験の機会を多くの人に提供していければと思います」

この先、情報技術の発展していくことで労働はさらに効率が上がっていく。ロボットによる労働の代替や、AIによる効率化が各所で起きていくだろう。そうなれば、人々の余暇は増加していく。増えた余暇時間で、人々は新たな体験を求めに行くのではないだろうか。

img: Sow Experience