自動運転は2050年に”7兆ドル超え”の経済効果に――Intelが「パッセンジャーエコノミー(乗客経済)」を発表

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米大手半導体企業Intelと米調査会社Strategy Analyticsが、自動運転車の普及によって生まれる新たな市場「Passenger Economy(パッセンジャーエコノミー)」に関するレポートを発表した。同レポートの試算によると、自動運転車が実用化された場合、2035年には8000億ドル(およそ88兆円)、2050年には7兆ドル(およそ770兆円)の市場規模に達するという。

自動運転車がもたらすと予測される7兆ドルの市場の大半を構成するのは、消費者あるいは事業者向けに移動手段を提供するサービスだ。レポートではこうした業態を「Mobility as a Service(MaaS)」と定義した。消費者向けには3.7兆ドル、事業者向けには3兆ドルの経済規模が見込まれるという。

消費者向けのMaaSとしては、自動運転車のカーシェアリングサービスが拡大し、オンデマンドで移動手段を利用するサービスの登場が予測されている。移動手段を提供するサービスの需要が高まれば、自動車会社は車体を製造するだけではなく、移動サービス全体を提供する”プロバイダー”として、ビジネスの幅を広げていく可能性が示唆されている。

残りの市場を構成するのは、自動運転車を応用した新たなサービスだ。例えば、Amazonによる自動制御ドローンを使った配達もここに含まれる。

新たな可処分時間により拡大するパッセンジャーエコノミー

レポートでは、市場規模とは別に、自動運転車の社会的・経済的影響にも言及している。事故の減少や渋滞の緩和とともに指摘されるのが、運転時間の削減だ。世界平均では通勤にかかっている時間はおよそ30分。

世界中のビジネスパーソンが通勤のために運転をする時間を合計するとおよそ600億時間に上る。日本で行われた調査によると、運転をする人の月間走行距離の平均が 350km、1日当たりの平均運転時間は1.6時間だという。

これまで運転に費やされていた膨大な時間を別の活動に充てることが可能になれば、確実に新たな需要が生まれると予測される。レポートでは、自動運転車内で人々が今より多くの時間をSNSやメールのチェック、動画の視聴を楽しむようになると予測している。

さらに車内で楽しめるコンテンツの幅も広がる。カーステレオや車内搭載の小さなスクリーンではなく、大画面で映像コンテンツを視聴することも可能だ。車内で消費されるコンテンツが量・種類ともに増えていけば、位置情報にもとづいた広告ビジネスも拡大すると予測される。

自動運転車は雇用を生み出すか

今回のレポートで定義されたパッセンジャーエコノミーの存在は、「自動運転車が雇用を奪う」という意見への反論としてこれまでも指摘されてきた。

ベンチャーキャピタリストでFacebookやeBayの取締役を務めるマーク・アンドリーセン氏も、雇用に対する不安は「歴史上、何度も繰り返されてきたこと」であると述べ、自動運転車が新たな経済を生み出す推進力であることを強調した

今回のレポートにおいても、運輸・物流業界における雇用に与える影響については言及されている。人間のドライバーを自動運転車が代替することにより、ドライバーが職を失う可能性は否定できない。その上で、ドライバーに再度トレーニングを提供し、新たな業務を与えることも、運輸・物流業界が取り組むべき課題であると述べている。

例えば、サプライチェーンマネジメントなど、より専門的な領域にドライバーの業務の幅を広げていくことも可能だという。自動運転車の実用化を見越した人材配置やトレーニングは、これから運輸・物流企業にとって必要な取り組みになっていくかもしれない。

レポートを作成したIntelは数年前より自動運転への投資を強化している。レポートで描かれるパッセンジャーエコノミーには、彼らの期待も大いに込められているのだろう。技術革新によって生まれる需要はいつの時代も確実に存在する。パッセンジャーエコノミーの議論は、新たな価値を創造するためのヒントをもたらしてくれるはずだ。

img : Intel

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