世界的に金融領域におけるテクノロジー「FinTech」が注目を集め、金融機関や決済機能を持つ企業がこぞって投資を行っている。だが、FinTechに関係するのは、何も金融機関だけではない。金銭のやりとりが発生するサービスは、すべて関係している。ここ最近、飛ぶ鳥を落とす勢いで日々ニュースが飛び出している小売の大手Amazonも、実はFinTechに関わるプレイヤーだ。
Amazonは2014年2月20日より、法人の販売事業者向けに融資サービス「Amazon レンディング」の提供を開始している。同サービスは、Amazonマーケットプレイスに参加している法人販売事業者を対象とし、販売事業者のビジネス成長を支援するために必要とする資金を必要とするタイミングで提供するというものだ。
「Amazon レンディング」は、Amazonの取引データを自動解析することで融資前に審査を完了する点が特徴だ。日々、Amazonで取引を行っていれば、いくら貸し出すことができるかが事業者の管理画面上に表示される。Amazonのマーケットにおいて実績が出ている事業者は、スムーズに融資を受けることができ、自らのビジネスを成長させられる。
最近になって、海外メディアはAmazonが米国や英国、日本で小規模事業者向けの融資事業を拡大することを報じている。より多くの人々がAmazonから融資を受けることが可能になっていく。Amazonにとってこの拡大は、Amazonを利用している事業者との結びつきを強めるための施策とも言える。Amazonを使い続け、取引データを残すことで融資を受けやすくなるからだ。
こうしたコマースとレンディングが融合する動きは、他にも見られる。たとえば、オンラインストアを開設できる「STORES.jp」は、2017年5月8日にネットショップを運営しているストアオーナー向けの融資サービス「マエガリ」をスタートしている。マーケットを提供するプレイヤーにとって、融資を行って事業者の成長を支援することはマーケットの成長にもつながる。マーケットプレイスを提供しているプレイヤーが融資サービスを始める動きは増加しそうだ。
取引データをもとにレンディングを行う動きは、コマースだけに限らない。よりお金の動きと近いところでいけば、会計サービスを提供している株式会社マネーフォワードは2017年1月に資金調達サービス「MFクラウドファイナンス」をリリース、同じく会計サービスを提供する弥生株式会社は2017年4月に会計ビッグデータを活用した金融サービス「オンラインレンディング」の事業を発表している。
商品の売買や会計、決済などお金の流れが把握可能なサービスの提供者は、みなレンディングとも相性がいい。今後、こうしたプレイヤーたちがレンディングの領域に足を踏み入れてくることは想像に難くない。融資はこれまで時間と手間がかかる面倒なものだった。これからは他のプレイヤーが次々と参入し、ユーザーが融資を受けやすい環境が生まれていくだろう。
img:Amazon, STORES.jp