クラウドリアルティでは少額の資金調達も可能。不動産特化の投資型クラウドファンディングは日本の空き家を救えるか

日本各地で空き家が増えている。野村総合研究所の調査では、2033年には空き家数は約2,170万戸に増えると予想されている。増える空き家をどう有効活用するのか、その方法が模索されている。

空き家を活用するためには、当然資金が必要になる。改修費等の初期費用、ランニングにかかる資金を考えれば、やすやすと手を出せるものではない。自分で貯めるか、銀行から融資してもらうか、資金を集める方法はあるが、現状はなかなか難しい。

その現状を打破しようと動き始めているのが、株式会社クラウドリアルティだ。同社は、不動産に特化した投資型クラウドファンディングサービス「Crowd Realty」を、2017年5月26日に正式ローンチ。古民家をリノベーションして、宿泊施設として利益を図るべく、「京町家再生プロジェクト」を掲載している。

誰もが資金の出し手にも、受け手にもなれるP2P型の金融システムを導入し、地方に眠る遊休資産を蘇らせるべく邁進中だ。Crowd Realtyが普及すれば、個人で保有する古民家やビルを低コストで証券化できるようになるのはもちろん、個人の投資も気軽にできるようになるだろう。

不動産の証券化とクラウドファンディングの組み合わせ

Crowd Realtyが導入するP2P型の金融システムとは、既存の不動産の証券化手法とクラウドファンディングの組み合わせだ。

既存の不動産の証券化手法には、J-REITと呼ばれる仕組みがある。これは、設立した投資法人が不動産を管理し、管理のために必要な資金を投資家から集めてくる仕組みだ。ただ、この仕組みは、投資法人の設立にお金や時間がかかる上、投資額も高額になることから、個人でできるものではなかった。

お金や時間のコストを解決しようと、クラウドリアルティは、証券化する際のプラットフォームを提供している。これは、従来の投資法人設立をCrowd Realtyが担い、設立にかかるコストを削減することで、個人でも資金の受け手になれる仕組みだ。

さらに、投資方法としてクラウドファンディングの仕組みを導入。従来のクラウドファンディングサービスでも、不動産の改装費用などを募るケースはある。しかし、製品やサービスをリターンとして用意する必要があり、リターンを用意するためのコストや、在庫数によって、十分な改装費用は集まらない傾向にあった。Crowd Realtyは、こうした従来のクラウドファンディングの課題を解決する。

Crowd Realtyは、既存の不動産投資と同じように、運用状況によって資産が分配される仕組みだ。小口から投資可能であることも相まって、改装費用として足るだけの資金は集めやすいといえる。事実、正式ローンチ後、初案件となった京町屋再生プロジェクトは、2017年6月現在、目標金額の7,200万円のうち、3,195万円をすでに集めている。

この京町屋再生プロジェクトを例にとると、資金の募集期間終了後は、2017年6月28日から2020年6月末まで物件の運用・売却が行われ、2018年6月末から2019年6月末までの期間が、1度目の分配期間。そして2020年6月末に、最終分配が行われる。

地方に眠る、小規模不動産の可能性

Crowd Realtyの普及によって影響を受けるのは、都市部ではなく地方だろう。これまで、既存の不動産の証券化手法は、都心のビルなどの大規模な不動産に偏っていた。

空き家の現状を見れば、三大都市圏に含まれる市部と比べて、三大都市圏を除く市部での空き家の割合が高い。空き家の割合から見ても、都市部以上に地方にこそ、その必要性を感じている人は多そうだ。それに、オンラインで不動産の証券化が可能になれば、東京に集中していたお金が、地方へ回る可能性も考えられる。

誰にも使われずに地方で埋もれていた物件も、Crowd RealtyのWebサイト上に掲載され、人目につくようになれば、出資の機会を得ることになるだろう。収益性が見込める物件や、この先価値が向上することが見込める物件であれば、Crowd Realtyのような仕組みで資金を募ることができそうだ。地方の空き家で収益性の低い物件にどう対応していくかはまた違ったアプローチが必要になるだろう。

テクノロジーの発達によって、人と人はつながりやすくなった。それと同時にお金の取引もしやすくなった。個人でも、少額から出資をはじめられるクラウドファンディングは、その最たる例と言えるだろう。個人同士が気軽につながり、お金の取引が容易になったいま、個人を主軸とした小規模な経済圏が、数多くできつつある。Crowd Realtyは、そんな小規模経済圏の存在を、肯定する役割を担う。

img : Crowd Realty

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