週末は家族でショッピングモールへ――そんな姿も10年後には見られないかもしれない。
米国では現在、ショッピングモールが窮地に立たされている。米国におけるショッピングモールの歴史は今から60年近く前に、ミネソタ州ミネアポリス近郊にオープンした「サウスデール・センター」がから始まった。
そこから60年近く経ち、全米には1,000を超えるショッピングモールが存在するが、そのうち数百は閉店の危機に瀕しているという。
米で次々と死に絶えていく、ショッピングモール
ここ数年、米国における大型小売店の減速が顕著になっている。米小売大手のシアーズは17年1月に150店の閉鎖と、傘下の老舗工具ブランドの売却を発表。3月には更なる融資と事業売却を行わなければ、事業継続が難しくなっている旨も発表している。
百貨店においても、米百貨店大手メイシーズは16年8月にデパートメントストア100店舗の閉鎖を発表。ショッピングモール内に入る大型テナントは次々と撤退を余儀なくされている。
大型店舗だけではない。スターバックスもショッピングモール内を中心に展開する紅茶専門店の戦略見直しを17年4月に発表。特にショッピングモール内の店舗の売り上げが芳しくないという。
米国内におけるショッピングモールの衰退の背景には、純粋な建物の老朽化と、ECの台頭にあると言われている。約60年前、ブームの最初に作られた店舗の老朽化は想像に難くない。一方、ECの台頭はショッピングモールが単純な購買行為の提供のみに注力してきた結果だと言えるだろう。
他人事ではない米ショッピングモールの興亡
自動車社会である点や人口、国土面積、文化の違いがあるため一概には語れないものの、ショッピングモールの衰退は日本にとってもおそらく他人事ではない。日本でもここ数年、郊外を中心に超大型ショッピングモールが次々と登場してきている。
東京近郊はもちろん、都市圏にはほぼ例外なくショッピングモールが整備されている。地方でも規模の大小はあれどショッピングモールは生まれ続けている。
一般社団法人日本ショッピングセンター協会によると、15年時点で全国には3,195のショッピングモールが存在。そのうち人口15万人以上の都市には465店舗、それ以外の地域に2,730店舗存在しているという。全国にあるショッピングモールのおよそ85%以上は人口が決して多くないエリアに存在するというわけだ。
出生率の低下とそれにともなう人口減少、さらには都市部への人口集中が進む日本において、ショッピングモールの数字は見方によっては恐ろしい数字となる。米国以上のスピードや規模で大量のショッピングモールが閉鎖に追い込まれる可能性もある。
“買わない”ショッピングモールという可能性
では、今後ショッピングモールはどう生き残っていくべきなのだろうか。単純な購買行為のためのショッピングモールがもはや必要ないのは事実だ。
生存策の一つとして挙げられるのが、“体験型モール”の姿だろう。
流通大手イオンのショッピングモールを展開する株式会社イオンモールは、13年にオープンした旗艦店イオンモール幕張新都心を皮切りに、モノ消費からコト消費へ軸足を切り変えはじめた。イオンモール幕張新都心では、よしもと劇場や、東映ヒーローワールド、お仕事体験テーマパークのカンドゥーなど多様な体験型施設を従来よりも高い比率で誘致を行った。
14年に千葉県木更津市にオープンしたイオンモール木更津では、自動車の買取・販売を行う株式会社IDOM(旧・ガリバー)と提携。木更津や房総半島の観光情報を提供し、車を通したライフスタイルを提案する店舗HUNT(ハント)を展開。その他、さまざまな施設でコト消費への移行をすすめているという。
コト消費だけではない第3の選択肢を探せ
超多店舗展開する流通大手がコト消費へ舵を切ることが示すように、単純な消費行為のためのショッピングモールはもはや成立させ続けることは難しくなっている。
GINZA SIXが百貨店ビジネスからショッピングモール型のビジネスへビジネスモデルを転換しているように、ショッピングモール自体も、次の形を模索することが求められている。
単純な購買行為が目的であれば、ショッピングモールはもはやECには敵わない。あえて足を運ぶための目的・価値がこれからのショッピングモールには必要となってくる。数年前から注目を集めているコト消費は確かにその一手ではある。
ただコト消費が正解とは限らない上、さらなる選択肢は考え続けなければいけない。ショッピングモールはどのように生き残れるか。社会や消費者ニーズの変化を捉え、次なる価値を探し続けなければいけない。
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