病院への交通インフラ不足で苦しむ360万人の人々を救うため、ライドシェアのLyftが「無料送迎」で保険大手と提携

ライドシェアサービスのLyft(リフト)と、全米の保険会社を代表する「BCBS(ブルークロス・ブルーシールド)協会」(以下・BCBS)が提携し、医療機関への「無料送迎」サービスを開始する計画が明らかとなった

具体的な提携内容は明らかにされていないが、目指していることは面白い。BCBSは、特定の民間医療保険の加入者のうち、医療機関が徒歩や自転車等の移動圏内ではなく、公共交通機関からもアクセスが難しいなど、医療機関に足を運ぶことが難しい人々に対して、サービスを提供することで、コスト削減と治療状況の改善につなげられると考えている。

BCBSによれば、アメリカには交通インフラにハードルがあり、推定360万人のアメリカ人が医療の予約ができていないか、遅れている状況にあるという。予約から通院までをサポートすることができるようになれば、コミュニティ内の多くの人々が適切なタイミングで診察を受けることが可能になる。Lyft共同創業者のJohn Zimmer氏は、「この業界を横断するパートナーシップは、コミュニティをより強くし、家庭をより健康にするものだ」とコメントしている。

ライドシェアのサービスを使って交通のハードルをなくすことで、予約の無断キャンセルを減らしたいと、BCBSは考えているようだ。飲食店であっても、予約の無断キャンセルは問題となる。医療の現場であればなおさらだ。予約によって設備や人員を確保しておき、予約通りに人が通院できれば、適切な治療を受けやすくなる。

Lyftは2016年1月に患者を医療機関に送迎する「National MedTrans Network」と提携。ニューヨーク市で、緊急時以外の医療機関までの往復にLyftを利用する高齢者専用のサービスの提供を開始している。

Lyftは同提携に合わせて、サードパーティー用ウェブアプリ「Concierge(コンシェルジュ)」の提供を開始しており、パートナー会社はConcierge経由でスマートフォンを持っていない人の代わりにLyftをオンラインで手配することが可能だ。Forbesによれば、BCBSとの提携における試験プログラムでもLyftは、Conciergeを利用する予定だという。

こうしたアプローチは、ライドシェアと医療サービスの双方に新しいチャンスを広げることにもつながる。移動とサービスを合わせて提供するという考え方は、他のサービス領域にも転用できそうだ。

日本はアメリカよりも国土面積は広くないが、都市部でも地方でも交通インフラが十分に整っているとは言い難い。医療機関へのアクセスをよくするために、今回の事例から学べることもありそうだ。

モバイルバージョンを終了