『雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか』。
2014年、機械学習を専門にしているオックスフォード大学准教授のマイケル ・A・オズボーン氏が発表した上記タイトルの論文は、全世界をにわかに騒がせた。
ICT(Information and Communication Technology)による業務のオートメーション化は、時として人間にとっての“リスク”として報じられる。「コンピューターが人間の仕事を“奪う”未来がやってくる」と。
その見方は決して否定できないものではあるが、この流れはさまざまな職種にとって、必ずしも悲観すべきことではないはず。とりわけ、教育業界にとっては“希望の灯”になる可能性を、大いに秘めている。
精度の高いアダプティブラーニングを実現する教育サポートサービス「Classi」
2015年、ベネッセホールディングスとソフトバンクが設立した合弁会社よりリリースされた教育サポートサービス「Classi(クラッシー)」は、ICTの力で教育現場に変革をもたらそうとしている。
Classiはクラウドやスマートデバイスなどの技術を最大限に活用することで、学校教育のデジタル化を推進し、現状の教育現場に散在する課題の解決を図る、総合的なプラットフォームとして設計されている。
2万本以上の動画や、分野・難易度で細かく分類された『Webテスト』をはじめとした学習コンテンツが豊富に用意されており、自学自習力を養成・サポートする機能が、Classiには充実している。
学習の状況やテストの結果はアダプティブラーニングエンジン「Knewton」に蓄積され、生徒一人ひとりの理解度に合わせた学習カリキュラムのデザインが可能に。集団授業に遅れを取ってしまった生徒のボトムアップも、知的好奇心の旺盛な生徒のトップアップも、同時にフォローできる。これは、ICTの力の賜物だ。
Classiは教員側にも大きなメリットをもたらす。生徒1人ひとりのデータを蓄積する『生徒カルテ』では、生徒単位で授業や自宅学習のさまざな情報を一元管理できる。どの生徒がどこでつまづいているのか、どんな単元が得意なのか――これらがいつでも客観的に把握できることで、総合的な学習評価や、個別のカウンセリングの精度は目に見えて向上するだろう。
ICTによる業務の劇的な効率化が、現場の教員に救いをもたらす
ICTが生み出す効果は、データ分析などによる学習の質的向上だけではない。現在の学校教育現場では、学力の多層化が進み、大学入試改革に伴う多面的な学習指導の導入など新たな学びが求められている。その一方で、教員の一週間あたりの勤務時間や教材の準備・事務作業にかかる業務負荷の増加は、大きな課題となっている。
Classiが導入されれば、教員のテスト作成や採点にかかる負担は激減する。またClassiは、教員同士や教員・保護者間で情報交換するためのコミュニケーションツールとしても機能する。
職員会議のアジェンダや保護者向けの学級通信など、資料作成のための時間も大幅にカットされ、日常的な業務上のコミュニケーションも効率化される。日々を圧迫していた雑務が減ることで、教員は純粋に生徒たちと向き合い、話し合う時間を増やすことができる。単純かつ身体的な“業務の効率化”が、現場の教員たちにとって大きな救いとなるはずだ。
サービス開始から2年が経過した今、Classiの全国の高校における(中高一貫校含む)総導入学校数は1,800校を超え、有料利用者数は70万人を突破している(※2017年4月時点)。学校現場における民間サービスの導入には、さまざまな障壁がある。長年、日本の教育市場にアプローチをし続けてきたベネッセが持つ知見と信用、通信インフラを支えリードしてきたソフトバンクが持つ技術的サポート力――この2社が手を組んだからこそ、教育現場からの信頼を得られ、短期間での拡大を遂げているのだ。
Classiは2017年4月に発表したリリースにて「今後も、教育におけるICT活用の重要性を見据え、パートナーとのアライアンスや最新のテクノロジーを活用しながら、未来を生きる子どもたちによりよい学びを提供できるよう、新たな教材・サービスの開発に取り組んでいきたい」との声明を出している。
“人間がやらなくてもいい業務”をコンピューターが代替することで、人がより“人間がやるべき業務”に専念できるようになっていく潮流が、今後さまざまな職種にて発生することが予見される。今、貴方が担っている仕事の中で、コンピューターが代替不可能な業務は、果たしてどれくらいあるだろうか。自分という人間がやるべき、自分だからこそ価値を生み出せる要素を見出して、その周辺スキルを磨いていくことが、これからのICT社会における生存戦略のカギとなるのかもしれない。
img: Classi