子どもは曇った窓に絵を描き、大人は掴めなさそうな電車の壁に掴まりながら通勤する。
本来の用途以外に使えそうな点を見つけることは人間の1つの才能と呼べるだろう。カフェで仕事をするのも、階段に座り込むのも、ある種その才能が見つけた「場所の可能性」の再定義だ。
特に都市部では、土地の狭さと人の多さ、そして地価の高さから人々はさまざまな「場所の可能性」を見つけ、活用している事例が多い。スターバックスが、サード・プレイスという名でブランディングに成功しているのもその一例と言えるだろう。
カラオケルームが、コワーキングスペースに
最近、この可能性を新たに解放したのが、カラオケルーム「ビックエコー」を展開する株式会社第一興商だ。同社は、ビッグエコーのうち首都圏27店舗で、ワークスペースを提供する新サービス「ビジネスプラン」を4月24日より導入した。
カラオケルームは駅から近くアクセスしやすい立地が多く、カラオケならではの個室で周囲の目を気にすることなく会話ができ、机に広げた資料を第三者に見られる心配もないため、ビジネス利用として利便性の高さが注目されている。
第一興商とNTTコミュニケーションズ株式会社は、昨年12月から今年2月にかけてカラオケルームの一部にインターネット無線LANを導入。カラオケルームをワークスペースとして活用する実証実験を行っていた。今回スタートするビジネスプランは実証実験で得られたノウハウを活用したものだ。
ビジネス利用の料金プランは、全店舗一律で1ソフトドリンク付き60分600円、延長30分当たり300円、オープンから19時までのフリータイムは1,500円に設定されている。これは従来のコワーキングスペースと比較しても比較的安い料金設定。一部の店舗では、NTTが提供するインターネット無線LAN環境により、安定したインターネット接続を快適に利用することができる。
ビジネスプランのユーザーには、ワークスペースに必要な「電源タップ」、「HDMIケーブル」、「卓上ホワイトボード」を無料で貸し出し。ルームに設置されている大型ディスプレイにノートパソコンを接続すれば、同席メンバーと資料の共有ができ、カラオケ用のマイクを使用してプレゼンテーションの練習も行えるという。
日中、レストランをコワーキングスペースへと変えるサービス
ビッグエコーの事例は、日中の比較的稼働率の低い時間を活かし、その時間主に活動するビジネスパーソンを取り込むことで、稼働率向上が見込める。こうした日中、空間の役割を変えようとする動きは世界でも見られる。
「spacious」は、日中は客足の少ないレストランが登録することで、コワーキングスペースとして貸し出すことができるようになるサービスだ。
レストランを登録すると受付のためのツールの提供や、コーヒーポットの提供などが行われ、レストランだった空間は働くためのスペースへと姿を変える。
働くために足を運んだ空間の居心地がよければ、夜の時間に食事に訪れようとする人が出てもおかしくはない。
現代では、営業時間中、ずっと同じ業態でサービスを提供することが時代に合わなくなってきているのかもしれない。実際に使っている人から学び、ニーズに応じた形でビジネスを展開していく必要がある。
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