自治体によるキャッシュレス化の事例を紹介。促進に力を入れる理由とは

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海外ではキャッシュレス決済が、決済方法の主流となりつつある。

しかし、日本のキャッシュレス決済比率は20%台とまだまだ主流とは呼べない状況である。

引用:http://www.soumu.go.jp/main_content/000506129.pdf

そのような状況の中、日本も国家としてキャッシュレス推進の方針を打ち出してきた。

キャッシュレス促進は、2020年のオリンピック・パラリンピック開催等を踏まえて、決済の利便性・効率性の向上が狙いである。

キャッシュレスを推進していくことで、これまで以上に海外からのインバウンド需要を取り込むことが可能だ。また、インバウンド需要の取り込みだけでなく、公的分野での電子納付が進むことで業務の改善が期待される。

そのためにも、公的分野の効率化のためにキャッシュレス決済の利用拡大は必須。そこで今回は、自治体が取り組むキャッシュレスについて解説していく。

自治体がキャッシュレスに取り組む理由

自治体がキャッシュレスに取り組むことで、以下のような効果が期待できる。

市民の利便性向上

自治体がキャッシュレスに取り組むことで、市民の利便性が向上する。

これまで市民が現金で支払っていた税金が、キャッシュレス化されることで、より手続きが簡単になる。

手続きが簡略化されることで、自治体側も窓口対応などの人員を減らすことが可能だ。市民の利便性向上と合わせて、自治体側もコスト削減ができる。

自治体がコスト削減できることで、他に予算を回すことができるようになる。

例えば、日本の大きな社会問題となっている少子高齢化を解決するために予算を割くことができれば、結果として市民の満足度も高くなる。

キャッシュレス化を自治体が促進することで、市民の利便性の向上が期待できるのだ。

キャッシュレス決済の促進

自治体がキャッシュレスに取り組むことで、民間も含めたキャッシュレス決済の促進にもつながる。

キャッシュレス促進につながる理由としては、自治体がキャッシュレスに取り組むことで、市民のキャッシュレスに対するセキュリティ面での不安を払拭できるからだ。

行政機関が責任を持ってキャッシュレスを推進することで、キャッシュレスが安全で信頼できる決済方法であると社会的に認知度を高めることになる。

また、前述したようにキャッシュレス決済によって市民の利便性が向上することで、キャッシュレス決済の促進によりつながる。

内閣府も自治体のキャッシュレスを促進

内閣府も、地方の活性化のために自治体でのキャッシュレス導入を推進している。

引用:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2018/2018_basicpolicies_ja.pdf

マイナンバーカードと、実証稼働中の自治体ポイントやクレジットカード等のポイントを合算し、地域におけるキャッシュレス化推進の仕組みを全国に導入・展開を推進している。

また、地方の活性化には、商店街や中小企業・小規模事業者への支援が欠かせない。そのため、商店街や中小企業・小規模事業者へのIT・決済端末の導入も促進している。

自治体がキャッシュレスに取り組む事例

続いて、自治体がキャッシュレスに取り組む事例を紹介していく。紹介していく事例は、以下の4つだ。

キャッシュレス都市(シティ)KANAGAWA宣言

神奈川県は、市民の利便性向上と事業者の人手不足解消としてキャッシュレスに取り組み始めた。

その取り組みは「キャッシュレス都市(シティ)KANAGAWA宣言」として、平成30年11月に発表された。

引用:https://www.pref.kanagawa.jp/docs/b8k/documents/cashless_sengennbunn.pdf

具体的な取り組みとして、以下の4つを掲げている

税金支払いのキャッシュレス化としては、平成31年1月より、自動車税、個人事業税、不動産取得税の支払いにLINE Payが導入されている。

税金支払いのキャッシュレス化は、都道府県単位では全国初となる事例だ。

また、県上下水道料金の支払いにもLINEPayが導入されている。

神奈川県では、「キャッシュレス都市(シティ)KANAGAWA宣言」を発表した後もキャッシュレス化に継続して取り組んでおり、県庁のキャッシュレス化も開始している。

神奈川県庁の情報公開広聴課では、「情報公開請求時の行政文書等の写しに係る交付費用」「航空写真の複製費用」についてキャッシュレス決済が可能とある。

使用できるキャッシュレスの支払い方法は、クレジットカード、LINE PayやPayPay等のQRコード決済、電子マネーに対応している。

消費者・事業者への普及啓発として、県内のキャッシュレス化を促進するために、新たな観光の核づくりの地域である大山地域の事業者と決済事業者とのマッチングなども実施。神奈川県内でキャッシュレス決済導入店舗が拡大している。

他にも、かながわ県民センターの会議室等使用量と駐車場料金の支払いにもキャッシュレス対応するなど、今後より一層のキャッシュレス促進が期待されている。

市の施設だけでなく、民間も一丸となって取り組む福岡市

福岡市では2018年6月から2019年3月の期間、市全体でキャッシュレスの実証実験が行われた。

実証実験の内容としては、対象施設でキャッシュレス決済サービスを導入し、キャッシュレス決済によって利用者の利便性が向上するのか、施設の決済関連業務の効率化が図れるのかの調査を行った。

対象施設となったのは、福岡市動植物園や福岡市博物館など福岡市の施設全10箇所に加えて、屋台や福岡空港の店舗など全222店舗である。

キャッシュレスの実証実験によって、訪日外国人への対応がスムーズにできたり、施設利用者の利便性向上や利用客のデータを取得できるなど、様々なメリットを享受できた。

一方で、利用出来る範囲が一部のみ、業務効率化のためには一定の利用者が必要などの課題も浮き彫りとなった。

引用:https://www.city.fukuoka.lg.jp/soki/kikaku/mirai/fullsupport_3.html

キャッシュレス化を推進する大阪府・泉大津市

大阪府・泉佐野市では、キャッシュレスを推進している。理由としては、泉佐野市には関西国際空港があるため、インバウンド需要に対応するためだ。

ホテルや高額商品を販売している小売店などでは、クレジットカードをはじめとしたキャッシュレス決済に対応している。よりインバウンド需要を取り込むために、キャッシュレス化を地元店舗でも進め、泉佐野市の経済活性化につなげることが目的だ。

また、泉佐野市では、地域通貨の活用にも取り組んでいる。

泉佐野地域ポイント「さのぽ」は2017年10月より開始され、泉佐野市内の加盟店でショッピングや市の事業に参加するとポイントが貯まる仕組みである。

さのぽでは、泉佐野市内の事業に関心を持ってもらうことや地域内でお金を循環させることを目的としている。さらに今後は、さのぽの利用によって得られた利用者のデータを泉佐野市内の店舗経営に役立てることも検討されている。

泉佐野市内では、さのぽの利用を促進するために、ナイトタイムエコノミー・キャッシュレス実証実験「エンターテイメント型ナイトマーケット in りんくうパピリオ」を2019年2月9、10日で実施した。

さのぽが利用できる飲食店や物産店が出展し、キャッシュレス決済を市民に実際に体験してもらった。また、ナイトマーケットは外国人観光客のニーズも高いため、継続して開催することで経済効果も期待できる。

引用:http://www.city.izumisano.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/35/PR20190124.pdf

Amazon Payの導入を実証実験した四條畷市

大阪府・四條畷市では、市役所窓口での住民票や印鑑登録などの支払いにAmazon Payを導入し、実証実験を行っている。

四條畷市では、全国の自治体として初となるAmazon Payを導入した。また、Amazon Payでの支払いに加えてd払いも追加している。

キャッシュレス決済の実証実験は、あくまで市民の利便性向上のための取り組みであり、今後は福祉などの他分野での活用も検討している。

四條畷市ではキャッシュレス以外にも、「四條畷市公式LINE」を利用して市民への情報提供など積極的に新しいサービスを導入している。LINEでの友だち登録を増やすための仕掛けとして、道路の不具合等の通報に利用できる仕掛けなどに取り組んだ。

市からの情報の一方通行ではなく、市と市民による双方向での情報共有を実現。今後の取り組みにも注目が集まっている。

引用:https://www.city.shijonawate.lg.jp/uploaded/attachment/7030.pdf

まとめ

今回の記事では、自治体がキャッシュレスに取り組み理由や実際の自治体の事例などを解説してきた。

自治体がキャッシュレスに取り組むことで、住民の利便性が向上したり、地方でもインバウンド需要を取り込むなどが期待される。

経済産業省が発表した「キャッシュレス・ビジョン」では、2025年に開催される関西万博までにキャッシュレス決済比率を40%まで引き上げることを目標としている。

そのためには、自治体によるキャッシュレス促進が必要不可欠だ。

今後、各自治体における実証実験のデータをもとに効果や課題を発見していき、各自治体でのキャッシュレス化が促進していくことが期待される。

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