ドローンの開発によって、業務上だけでなく、趣味として自動操縦による写真撮影等が手軽に行えるようになった。
そのことによって、新たな産業が創出され、人々の生活がより便利で豊かなものとなったが、一方で、ドローンの事故等も増え、安全性が問われている。
安全にドローンの飛行ができるよう、規制は時代に合わせて変化しており、安全にドローンを楽しむには多くのルールを守らなければならない。
今回は航空法を中心としたドローンの規制に解説していく。
規制対象となる無人航空機
航空法の規制対象となるのは、ドローンだけではない。
航空法の規制対象となる無人航空機の定義は、「飛行機」「回転翼航空機」「滑空機」「飛行船」であって、構造上人が乗ることができないもの。
かつ、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるもの(200g未満の重量「機体本体重量とバッテリーの重量の合計」のものを除く)となる。
具体的には、「ドローン(マルチコプター)」「ラジコン機」「農薬散布用ヘリコプター」が該当する。
ドローンの注意点としては、「機体本体重量とバッテリーの重量の合計が200g未満」となっていることだ。もし機体本体重量が200g以下でも、バッテリーを付けて重量が200gを超える場合は規制対象となる。
無人航空機の飛行ルール
ドローンの規制や飛行させる場所にかかわらず、飛行のルールを守ることが必要だ。
- アルコール等を摂取した状態では飛行させないこと
- 飛行に必要な準備が整っていることを確認した後に飛行させること
- 航空機や他の無人航空機と衝突しそうな場合には、地上に降下等させるこ
と - 不必要に騒音を発するなど他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させない
こと - 日中(日出から日没まで)に飛行させること
- 目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行
させること - 第三者又は第三者の建物、第三者の車両などの物件との間に距離(30m)
を保って飛行させること - 祭礼、縁日など多数の人が集まる催し場所の上空で飛行させないこと
- 爆発物など危険物を輸送しないこと
- 無人航空機から物を投下しないこと
アルコール等を摂取した状態では飛行させないこと
アルコール等を摂取した状態では、ドローンを飛行させてはならない。アルコール飲料だけでなく、アルコールを含む食べ物も該当するため注意が必要だ。
人が搭乗することがなくとも、アルコール濃度を問わずアルコールを摂取した状態では、ドローン飛行全般が禁止となる。
飛行に必要な準備が整っていることを確認した後に飛行させること
ドローンを飛行させる前には、ドローンの機体の状態を確認しなければならない。
- バッテリー、プロペラ、カメラが確実に取り付けできているか
- 通信系統、自動制御系統が正常に作動するか
- 飛行空域及び周辺状況
- 気象情報
- 視程が確保できているか
特に、周辺に障害物のない十分な空間を確保できているか確認しなければならない。法令で定められている30mよりも余裕を持った距離を人や物から取る必要がある。
これらを確認し、飛行に必要な準備が整っているかを確認し、安全に飛行させなければならない。
航空機や他の無人航空機と衝突しそうな場合には、地上に降下等させること
ドローンを飛行させる際に注意したいのが、他の航空機や無人飛行機との衝突である。そのため、航空機を確認した場合は、ドローンを地上に降下させなければならない。
また、他のドローンを確認した場合は、安全な間隔を確保して飛行させる必要がある。
他にも、ドローンの飛行を行っていることを周囲の人に伝えるためにも、操縦者はドローンの飛行の関係者であることが容易にわかる服装にしておこう。
目視(直接肉眼による)範囲内で飛行させること
ドローンの飛行は、目視で常時監視を行いながら飛行となる。
ただし、操縦者が目視できる範囲は、条件下によって異なるため注意が必要だ。操縦者の視力やドローンの機体の大きさ、空や建物などの背景の色や障害物の有無など、注意を配るべきポイントは多い。
また、目視外での飛行を行う際は、申請書を提出し許可・承認を得る必要がある。
飛行禁止区域
ドローンには、飛行禁止区域が指定されている。有人の航空機に衝突するおそれや、ドローンが落下した際に地上の人などに危害を及ぼす可能性があるからだ。
禁止されている空域は、「地表又は150m以上の高さの空域」「空港周辺の地域」「人口集中地区の上空」の3つとなっている。
空港周辺の地域
空港周辺の地域は、航空機の離陸や着陸の安全を確保するためにドローンの飛行禁止区域となっている。空港等の周辺の地域とは、以下の地域のことを指す。
- 空港やヘリポート等の周辺に設定されている進入表面
- 転移表面若しくは水平表面又は延長進入表面
- 円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域
- (進入表面等がない)飛行場周辺の航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める地域
特に空港等の境界付近など範囲が曖昧な場所で飛行させる場合には、空港等の管理者等に確認しなければならない。
また、新千歳空港、成田国際空港、東京国際空港、中部国際空港、大阪国際空港、関西国際空港、福岡空港、那覇空港ではドローンの飛行禁止区域が厳しくなっており、説明した範囲以外でも飛行禁止区域になっているので注意が必要だ。
人口集中地区の上空
ドローンは、人口が集中している地区の上空では飛行が禁止されている。万が一操縦操作のミスによって、ドローンが墜落した場合の事故を避けるためである。
人工集中地区とは、統計データに基づいて一定の基準により都市的地域を定めたものだ。人工集中地区の設定の基準は以下となる。
- 人口密度が1平方キロメートル当たり4,000人以上の基本単位区等が市区町村の境域内で互いに隣接
- それらの隣接した地域の人口が国勢調査時に5,000人以上を有する
人工集中地区は、5年ごとに実施される構成調査によって設定されるため、都度確認が必要になる。
地図の赤い部分が「人口集中地区」となっており、上記のURLから全国の人口集中地区を確認することができる。ドローンの禁止区域で飛行する場合は、あらかじめ国土交通大臣の許可が必要だ。
飛行申請手続きはオンラインで可能
ドローンの飛行申請手続きは、郵送、持参、もしくはオンラインで可能だ。
前述したように下記3つの空域では、国土交通大臣の許可が必要になる。
- 地表又は150m以上の高さの空域
- 空港周辺の地域
- 人口集中地区の上空
加えて、以下の6つの飛行については、承認が必要だ。
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人や物から30m未満の飛行
- イベント開催時の上空飛行
- 危険物輸送
- 物件投下
申請書類の提出は、飛行開始予定日の少なくとも10開庁日までに提出しなければならない。
ただし、申請に不備があった場合は審査にさらに時間を要してしまう。そのため、飛行開始予定日の10開庁日前より前に提出しておくと、提出書類に不備があった場合でも対応可能となる。
オンラインでの申請は、以下のURLより可能だ。
https://www.dips.mlit.go.jp/portal/
飛行する際に注意が必要な場所
ドローンを飛行させるには、航空法の遵守はもちろんだが、周囲の状況に応じてさらなる安全への配慮が必要だ。
- 不特定多数の人が集まる場所
- 高速道路や新幹線等の上空及びその周辺
- 無線施設等の周辺や電子機器を同時に利用する場所
不特定多数の人が集まる場所
学校や病院など、不特定多数の人が集まる場所の上空では、飛行させないよう注意しよう。もしドローンの操縦ミスで機体が落下した場合、大きな危害を及ぼすおそれがあるからだ。
第三者がいる上空ではドローンを飛行しないようにした方が良い。
高速道路や新幹線等の上空及びその周辺
高速道路や新幹線等の上空及びその周辺では、ドローンを飛行しないように注意が必要。
理由としては、もしドローンが高速道路や線路内に落下した場合、交通に重大な影響を与えてしまい、危険な事態を引き起こしてしまう可能性があるからだ。
無線施設等の周辺や電子機器を同時に利用する場所
他にも、無線施設等の周辺や電子機器を不特定多数が同時に利用する場所では、十分な距離を保ってドローンを飛行しなければならない。
このような場所では、ドローンが電波障害等により操縦不能になることが懸念されるからだ。十分にエリアを確認し、ドローンを飛行させる必要がある。
定期的に確認したいポイント
ドローンを飛行させる際に、定期的に確認したいのは以下の4つのポイントだ。
- 機体の点検・整備
- 技量保持
- 保険加入
- 消火器等の準備・携行
特にドローンで見落とされがちなのが、「火災発生時への備え」である。
ドローンが墜落した場合、地上の人や物件に被害を与えるだけでなく、火災を引き起こす可能性がありドローン墜落による火災発生時の初期消火に備える必要がある。
備えとして、ドローンに搭載する燃料や電池の種類、火災の種別等に応じた消火器等を準備・携行しなければならない。
まとめ
ドローンの技術発展によって、手軽に自動操縦による写真撮影等が行えるようになった。近年発売されているドローンのモデルでは、障害物検知や回避能力が向上するなど、安全性が向上している。
しかし、ドローンを飛行させる場合は、墜落や衝突などのリスクが伴い、安全性を確保するためにドローンの利用には法律による規制が存在するのだ。
ドローンの規制について正しく理解し、安全に飛行しなければならない。