SDGsは持続可能な世界を実現するために、発展途上国のみならず、先進国も取り組むユニバーサルな国際目標だ。
SDGsへの取り組みは、国家だけでなく、企業にも大きな役割を期待されている。
そこで、今回は、企業はどのようにSDGsに取り組むべきなのか、実際に企業がどのような取り組みを行っているかを解説していこう。
SDGsについての基本理解はこちらの記事を参照:
世界で議論されるSDGs(持続可能な開発目標)、日本の取り組み事例や内容を解説
企業が継続していくために、SDGsの活用が注目を集める
企業が経営を継続していくために、SDGsへ取り組むことが注目を集めている。
企業は、これまで消費者に求められる製品やサービスを提供してきた。近年は、少子高齢化や消費者ニーズの多様化などの要因によって、課題を抱える企業が増えている。そのような企業が、長期的に発展していくためには、社会のニーズを掴んでいく必要がある。
社会のニーズを掴んでいくために、SDGsの活用が注目を集めているのだ。SDGsの根幹の考え方である「持続可能な開発」は、「将来世代のニーズを損なわずに、現役世代のニーズを満たす開発」のことを指すため、社会の課題と長期的なニーズがつまっている。
企業はこれまでCSR(企業の社会的責任)の観点から、社会貢献活動を行ってきた。これまでの社会貢献活動は、主にボランティア活動などがメインであった。
一方で、SDGsは、企業の本業を通じて目標達成に取り組むことが重要とされている。そのため、SDGsの目標を達成するには、改めて企業の本業の意義を見直し、普段の業務の中から行動していかなければならない。
SDGsを活用することで、改めて本業を見直すきっかけとなることから、SDGsの活用を様々な企業が取り組み始めている。
企業がSDGsを活用することで得られるメリット
企業がSDGsを活用するにあたって、どのようなメリットが得られるのかは事前に把握しておく必要があるだろう。
SDGsを活用することで得られるメリットは、大きくわけて、「企業イメージの向上」と「新規事業の創出」と言えるだろう。
企業イメージの向上
企業がSDGsに取り組むことで、企業イメージの向上が期待できる。
企業イメージが向上することで、投資家や消費者から好意的な印象を持たれるだけでなく、企業の採用活動に対しても効果的だ。
企業イメージの向上によって、給料面だけでなく、会社への想いや活動に共感してくれる人材が集まりやすくなる。また、採用活動を通して、面接者に対して会社のイメージアップにつなげることが可能だ。
企業イメージが上がっていくことで、働いている従業員の意識やモチベーションアップも期待できる。
また、SDGsの目標5と目標8に取り組むことは、就労環境の改善や女性の活躍につながる。
- 目標5:ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
- 目標8:すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する
就労環境の改善によって従業員の満足度が上がり、結果として企業イメージの向上に役立つだろう。
新規事業の創出
SDGsへ取り組むことは、新規事業の創出にもつながる。
SDGsの課題を深掘ることで、今の社会においてなにが必要とされているかを知ることができる。そのため、SDGsの課題に取り組むことは、消費者のニーズを知ることにつながる。
また、SDGsのテーマである「持続可能性」を組み込んだ製品やサービスの開発に取り組むことは、必然的に付加価値が求められる。
他にも、SDGsへ新たに取り組む際に新たな事業パートナーを探すことで、新規事業の創出の可能性が広がる。
さらに、世界的にSDGsに取り組んでいる企業が増えているため、今後SDGsへの取り組みが取引条件となることも考えられる。
企業がSDGsに取り組むためには何をするべきか
では、実施に企業がSDGsに取り組むためには、何をするべきなのか。具体的には、以下の3つの手順を踏んでいくことが重要となる。
取り組むべき課題を整理する
SDGsは、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成されている。169ものターゲットの中から、企業はどのようにアプローチしたらいいか迷ってしまうだろう。
そのためには、まず自社の事業内容とSDGsの関係性を整理することが重要だ。
自社の事業内容から、それぞれの目標・ターゲットに影響を与えられるかを確認する必要があり、自社の事業内容とかけ離れたターゲットを選択した場合、目標を達成するのは非常に困難になってしまう。
また、SDGsへ取り組む動機を整理するのも一つの方法だ。例えば、燃料費や電気代の高騰がSDGsへ取り組む動機であるなら、従業員の省エネ意識をSDGsを活用して改善することも考えられる。
すでに、SDGsに取り組んでいる場合は、これまでの活動をまとめることから始めよう。今後の対策も取りやすくなる。
どの課題に取り組むべきか優先順位を決定する
取り組むべき課題を整理したら、次にどの課題に取り組むべきかの優先順位を決定しよう。言葉にするのは簡単だが、この優先順位を決定するのが最も難しい作業である。
取り組むべき課題は多くあるが、自社のリソースでできる範囲なのか、自社の事業内容で影響度の大きい課題はどれなのかを意思決定しなければならない。
SDGsへの取り組みで優先順位を決定してよいのかと疑問を持つかもしれないが、国連も各国の国情や能力、開発水準の違いを考慮し、政策や優先課題を尊重している。
SDGsへの取り組みは、企業の持続可能性に関わる事案である。そのため、自社の事業への影響度を考えて優先順位を決定する必要がある。
取り組んだ活動を伝える
実際にSDGsへ取り組みを始めたら、定期的に取り組みを報告することも重要だ。
SDGsの取り組みを報告が重要な理由として、従業員一人ひとりに当事者意識を持ってもらう必要があるからだ。SDGsは持続可能な開発目標であることは知っていても、「自分には関係ない」と考える従業員も多い。
いくらSDGsに取り組んでいるといっても、個人レベルで取り組むのではなく、企業全体で取り組んでいく必要がある。
そのため、SDGsへの取り組みの報告をすることで、社外だけでなく、社内への啓発につながる。社外・社内へ啓発していくことが、SDGsの取り組みの活動を活発化させることになる。
広報を通して、なぜSDGsへ取り組むのかを従業員一人ひとりが考えていかなければならない。
SDGsに取り組む日本企業を紹介
日本企業は、実際にどのようにSDGsに取り組んでいるのだろうか。以下に、具体例を紹介していく。
みずほフィナンシャルグループ
みずほフィナンシャルグループがSDGsへ取り組む活動のひとつとして、「環境ビジネス」が挙げられる。
みずほの環境ビジネスの取り組みは、SDGsの以下項目に対しての取り組みだ。
- 飢餓をゼロに
- エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
インドにおける環境ビジネスを展開しており、クリーンエネルギー化やスマート都市開発などの課題に対し、金融の立場から日系企業の海外進出などを支援している。
具体的には、インド南部アンドラ・プラデシュ州での太陽光発電所の建設・所有・運営事業を、国際協力銀行とともにプロジェクトファイナンスによる融資契約を締結した。
また、みずほ銀行・みずほ情報総研が参画したコンソーシアムが、経済産業省「インド:グジャラート州におけるスマート都市開発のインフラ西武の実施可能性調査」に採択。みずほは、事業全体の企画運営を担う。
農業分野におけるSDGs
SDGsにアプローチしやすい分野である、農業。農業は、今後の課題が「持続可能性」であり、SDGsとの共通点も多い。
「農業組合法人 One」では、農業を通じてSDGsに取り組んでいる。
SDGsの課題のひとつである「安全な水とトレイを世界中に」に関連する取り組みとして、生産した農作物の収穫祭イベントを実施。この収穫祭イベントでは、地域において身近な水辺である河北潟にスポットを当て、農業排水が濁りの一因となっている現状を地域住民に伝えた。
また、イベントへの入場料を、河北潟の水質浄化活動を行う「河北潟クリーンキャンペーン」の募金に当てている。
今後は、「廃棄している収穫後のの残渣の肥料化」、「生産プロセスのノウハウをパッケージ化」などを実施し、持続可能な農業の実施、誰でも質の高い農業が実践できる社会を目指している。
農業分野においては、SDGsの以下の目標が関わっている。
- 目標2:飢餓に終止符を打ち、食糧の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する
- 目標12:持続可能な消費と生産のパターンを確保する
- 目標13:気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
- 目標15:陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
まとめ
以下、今回の要点となる。
- 企業が継続するための方法として、SDGsの活用が注目を集める
- SDGsを活用することで企業が得られるメリットは、「企業イメージの向上」と「新規事業の創出」
- SDGsを実践していくには、一つひとつ手順を踏む必要がある
SDGsは、今後企業が継続していくためには、長期的に取り組むべき課題のひとつである。SDGsに取り組むことは長期的にみれば、消費者ニーズを知るために重要なツールだ。
SDGsを活用するメリットを享受するためにも、SDGsのどの課題であれば自社の事業内容が活かせるかを考えることから始めてみてはどうだろうか。