世界で議論されるSDGs(持続可能な開発目標)、日本の取り組み事例や内容を解説

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近年話題になっている「SDGs(エスディージーズ)」

世界中で活発に議論されているのだが日本でのSDGsの認知度はまだまだ低い現状があり、具体的に何をしているのか把握しておくのは難しい。

そこで、今回の記事ではSDGsについて以下の順で解説していく。

SDGsとは?持続可能な開発目標

SDGsは、Sustainable Development Goalsの略称。日本語に訳すと、持続可能な開発目標という意味になる。

持続可能な世界を実現するために17のゴール・169のターゲットから構成されており、「leave no one behind(地球上の誰一人として取り残さない)」を誓っている。

具体的なゴールは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている2016年から2030年までの国際目標だ。

SDGsの目標は、以下の17となっている。

  1. 貧困をなくそう
  2. 飢餓をゼロに
  3. すべての人に健康と福祉を
  4. 質の高い教育をみんなに
  5. ジェンダー平等を実現しよう
  6. 安全な水とトイレを世界中に
  7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  8. 働きがいも経済成長も
  9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  10. 人や国の不平等をなくそう
  11. 住み続けられるまちづくりを
  12. つくる責任つかう責任
  13. 気候変動に具体的な対策を
  14. 海の豊かさを守ろう
  15. 陸の豊かさも守ろう
  16. 平和と公正をすべての人に
  17. パートナーシップで目標を達成しよう

この目標に対して、それぞれどのようなアクションを行っていくのかのターゲットが設定されている。SDGsは、先進国だけが取り組むものではなく、発展途上国も取り組む普遍的なものだ。

詳しくは後述するが、日本もSDGsに対して積極的に取り組んでいる。

MDGsに代わる新たな世界の目標

SDGsはもともと、MDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)の後継として2000年9月に国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言を元に新たに採択された国際目標だ。

MDGsでは、以下の8つの目標を掲げた。

  1. 極度の貧困と飢餓の撲滅
  2. 初等教育の完全普及の達成
  3. ジェンダー平等推進と女性の地位向上
  4. 乳幼児死亡率の削減
  5. 妊産婦の健康の改善
  6. HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の帽子
  7. 環境の持続可能性確保
  8. 開発のためのグローバルなパートナーシップの推進

MDGsの達成期限であった2015年までに一定の成果をあげ、SDGsへと後継している。

 

日本のSDGsへの取り組み

日本におけるSDGsへの取り組みを可能にするため、政府は2016年5月に持続可能な開発目標(SDGs)推進本部を立ち上げ、実施指針の策定を行なった。

SDGsの17のゴールを、日本に合わせて以下の8つを優先分野としている。

  1. あらゆる人々の活躍の推進
  2. 健康・長寿の達成
  3. 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
  4. 持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備
  5. 省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
  6. 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
  7. 平和と安全・安心社会の実現
  8. SDGs実施推進の体制と手段

具体的に、日本がSDGs実施のために取り組んでいる事例を以下で4つ紹介する。

健康的な生活の確保

日本政府は、平和と健康のための基本方針を策定し、以下の3つを方針と定めた。

実際に、アフリカの公衆衛生危機への対応能力を強化するために、感染症対策の専門家を2万人育成、基本的保健サービスを受けられる人数を200万人増加することを約束した。

ジェンダー平等と女性のエンパワメント

日本政府は、女性の活躍推進のための開発戦略を発表し、国際協力を強化する支援を実施している。

例えば、女性に配慮したインフラ整備・母子保健サービスの拡大・女性の指導的役割への参画推進などの支援を通じて、女性の活躍推進を行っている。

これまでに、インドで女性専用車両や防犯設備などの地下鉄システム整備、アフガニスタンでの女性警察官の育成事業などを実施した。

防災

日本は、これまでの地震や台風などの自然災害の経験から培われた知識や技術を活用して、緊急支援や事前の防災対策の支援を行っている。

日本の知識や技術を活かすために、国連防災世界会議をこれまで日本で3回実施。第3回目となった仙台での開催は、185国の国連加盟国の6,500人以上が参加し、過去最大級の国際会議をホスト国として務めた。

また、東日本大震災の津波の被害を受けたことから、津波に関する意識を高めるために「世界津波の日」を各国に呼びかけ、実際に11月5日を世界津波の日として採択されている。

グローバル・パートナーシップの強化

SDGsを実現するためには、国や自治体の連携だけでなく、民間セクターやNPO、各種団体との連携が必要だ。そのために、SDGs推進円卓会議を活用するなど、様々な連携を図っている。

他にも、SDGsの認知度向上のためや日本国内の取り組みを国際的に知ってもらうための広報活動も取り組んでいる。

SDGsアクションプラン2019とは

日本は、ここまで紹介した取り組みに加えて、2019年の日本のSDGsモデルを発信するために「SDGsアクションプラン2019」を発表し、新たな取り組みを行っている。

SDGsアクションプラン2019は、日本が優先分野とした8つの分野への取り組みをより推進していくために、2019年における具体化・拡大された政府のアクションプランだ。

国内実施・国際協力のどちらにおいてもSDGsを推進するために、以下の3つの分野で新たな取り組みを盛り込んだ。

それぞれ紹介していく。

SDGsと連携する「Society(ソサエティー)5.0」の推進

Society5.0とは、サイバー空間とフィジカル空間を融合させ、経済発展と社会的問題の解決を両立させる人間中心の社会のことだ。

Society5.0の推進と合わせて、SDGsの実現のための取り組みを連動させ、中小企業でのSDGsの取り組みの強化、科学技術のイノベーションの推進に取り組んでいる。

具体的には、SDGsをどのようにして企業経営に取り込み、ESG投資を呼び込むかを考えるために「SDGs経営/ESG投資研究会」を立ち上げた。ESG投資とは、事業内容や会計データだけでなく、環境・社会・企業統治に配慮している企業に対して行う投資だ。

SDGs経営/ESG投資研究会では、国内外のSDGs経営の成功事例や投資家はどのような立場で取り組みを評価するかなどの議論を行っている。

SDGsを原動力とした地方創生、強靭かつ環境にやさしい魅力的なまちづくり

SDGsを原動力として地方創生では、以下のような取り組みを推進している。

実際に地方公共団体が、SDGsの達成に向けた取り組みの中から先導的な取り組みを行い、モデル事業として選択されることで資金的に支援を受けることが可能だ。

SDGsの担い手として次世代・女性のエンパワーメント

次世代のエンパワーメントでは、「次世代のSDGs推進プラットフォーム」を始動させ、国内外における具体的な取組を推進している。

次世代のSDGs推進プラットフォームとは、2030年以降にSDGs推進の主役となる次世代への関与を深め、日本のSDGsモデルを示すためのプラットフォームだ。

女性のエンパワーメントでは、WAW!(国際女性会議)とW20(G20エンゲージメント・グループ会合)において、女性活躍のための方法について議論を深めている。

日本企業におけるSDGs

日本企業におけるSDGsへの取り組みは、以前よりも増えてきている。ただ、まだまだCSR(企業の社会的責任)の一環として捉えられているのも現状だ。

ただ環境や社会に配慮した企業が、優良企業としてイメージアップした循環も少しずつだが生まれている。

例えば、アークフロント社では、石灰石から生まれた新素材である「LIMEX(ライメックス)」を使ったサービスを提供。LIMEXは紙とプラスチックの代わりとなる素材として注目を集めている。

これまでの普通紙は、約1トン生産するために樹木約20本、水約100トンが必要だった。しかし、LIMEX1トンを生産するのには樹木を必要とせず、石灰石0.6トン〜0.8トンとポリオレフィン約0.2〜0.4トンとなっている。新素材を利用することで、環境問題の1つである森林破壊を防ぐことができるのだ。

日本企業におけるSDGsの取り組みを増やしていくためには、消費者である一人ひとりが企業の取り組みに対して注目していくことが必要だ。

SDGsとESG

SDGsとESGは、持続可能な世界を実現するための取り組みだが、それぞれの視点が異なる。

Environment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)の3つの頭文字をとった略称であり、企業が成長していくためには、この観点から配慮が必要であるという考え方だ。

ESGは、株主や投資家も重要視するようになってきており、ESG投資とも呼ばれる。そのため、企業は投資を受けるためにESGを意識した経営を行う。ESG投資は持続可能な世界を投資家からの視点で見ている考え方である。

一方で、SDGsは「leave no one behind(地球上の誰一人として取り残さない)」を誓った国際目標であるため、社会からの視点で持続可能な世界を見ている。

持続可能な世界を考慮せずに経営を行うと、消費者は離れていってしまう。近年、ファストファッションの生産現場の労働環境が過酷であることが判明し、ブランドの不買運動なども起きている。

まとめ

以下今回の記事の要点とする

現代社会では、企業の売上だけでなく、環境や社会に配慮した経営を行っているかが重要視される。そのためにも、国際的な取り組みであるSDGsについて知っておくことはビジネスを行う上で非常に重要だ。

SDGsについて理解を深め、これからのビジネスに活かしてみてはいかがだろうか。

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