「イベントに参加したが、懇親会では誰にも話しかけられず、スマートフォンをいじって終わってしまった」「名刺をたくさんもらったが、どれが誰だか分からない」こんなことはないだろうか?

そこで、 イベント・コミュニティのプラットフォームPeatix (ピーティックス)を運営する、Peatix Japan 取締役CMO 藤田祐司氏に、イベント参加のコツを伺った。「ビジネスパーソンたちが人脈を広げる上でどんなイベントに参加するのがいいのか?」「イベントでどんな立ち回りをする必要があるのか?」などの疑問をぶつけた。

「5つの型」に見る、これからのイベントの可能性

——Peatixのサービス概要や近年のイベント傾向を教えてください。

藤田:イベントを探して申し込んだり、主催者側のコミュニティをフォローしていただいて、活動をウォッチしたりすることができるサービスです。イベントの主催者側は、イベントのページを作って集客・参加者管理にお使いいただけます。

2011年にスタートしたサービスで、グローバル全体でのユーザー数は、2019年1月末時点で350万人。常時6,500〜7,000程度のイベントが掲載されており、数も増加傾向です。特に日本は、いわゆる「草の根のイベント」が多いですね。

イベント内容の傾向でいうと、以前までは、ビジネスの世界では大型のカンファレンスが中心だったのですが、今は30人から100人の小規模イベントが中心となっています。頻度も年1回のカンファレンスから、2〜3ヶ月に1度の小型イベントに移ってきました。

ファンやコミュニティ作りに軸足が映っている印象です。大型のイベントよりは小型のイベントの方が、参加者に接触しやすいのが背景としてあると考えています。

——数々のイベントを開催されていますが、イベントにはどのような“型”がありますか?

藤田:5つあると考えています。

①講義型
先生と生徒がいて、話を聞くセミナーの形式が、分類されます。

②対談型
トークセッションやクロストークがあるもの。

③ワークショップ型
アイディアソンのように、参加者が能動的に参加しアウトプットするタイプのもの。

④スナック型
お酒が飲めるバーで、スタートアップや投資家、大企業の方々などが集まるイベントです。こちらは、何かを学ぶというよりも、出会いを目的に置いたものです。

⑤合宿型
キャンプ場に行って、1泊2日で学ぶようなものです。それぞれ別の仕事を持っている方たちが、主催しています。

最近は⑤のような合宿型が増えてきてます。例えば、「THE LIFE SCHOOL」という合宿型のイベントは、芦ノ湖や軽井沢などで行われるビジネススクールです。

「自然に囲まれたキャンプ場で仲間と集い、一緒に寝泊まりして、アイディアを交換しながら、ビジネスと人生を豊かにする実践スキルを学ぶ」というコンセプトで、2019年は芦ノ湖で開催されました。


The Life School 公式 note より

ヤフーの伊藤羊一さんやユニリーバ・ジャパンの島田由香さんなど、豪華な講師陣から、生きる意味や組織論を学ぶことができます。私もコミュニティについても授業をしてきましたが、講師自身も授業に参加できて、講師も参加者も学びを得ながら交流して過ごすことができました。120人程参加されていましたが、講義を受けながら2日間ずっと一緒に過ごすので、つながりを築きやすい環境でした。

2日間に渡るイベントへ参加される方々なので、ベースとして何かを得ようというという気持ちを共通して持っています。参加するハードルはかなり高いとは思うんですけれども、新しいイベントとしての可能性を秘めています。私自身も参加して、楽しかったですね。

——「イベントを通じてつながりを作りたい」という人は、どういったイベントを選ぶとよいのでしょうか。

藤田:懇親会があるイベントを選んだ方がよいと思います。よりつながりを作りたいのであれば、ワークショップ形式がおすすめですね。ワークショップのなかでもつながりを作りたいというのであれば、テーブルを回りながらワークショップをやっていく「ワールドカフェ形式」のものを選ぶとよいと思います。触れる人数が増える仕掛けがあるイベントであれば、つながりやすいのかなと思います。

SNSやブログで、過去のイベントの写真を見て、雰囲気をつかむのもおすすめです。

——イベントなど、リアルの場でつながりを作ることのメリットとは?

藤田:イベントなど、リアルの場で生まれるような「弱いつながり」の方が、次につながりやすいと考えています。米国の社会学者マーク・グラノヴェッターが論文で発表した「弱い紐帯(つながり)」という概念があります。家族や親友などの強いつながりよりも弱いつながりの方が、仕事につながるという理論です。Peatixは、30人程度のイベントが多い、弱いつながりの集合体です。そこまで大きくない集まりのなかで、複業などの新しい取り組みにつながる出会いが生まれているように感じています。

こうした弱いつながりを、オンライン上で作るのは難しいと思います。リアルの場の方が、情報量が多い。Peatixでも、イベント主催者どうしのオフラインのサロンで出会った人たちが、また新たにイベントを作る事例も出てきています。

実際に会って、体温を感じて、「この人と一緒であれば、新しいことに取り組めそうだ」と判断しているからこそ、プロジェクトを立ち上げたり、複業の仕事をオファーしたりすると思うんですよね。オンラインで情報を集めて、リアルの場で深める。この二刀流が今後加速していくと思います。

大切なのはインプットとアウトプットのバランス

——イベントを上手く人脈づくりに生かしている人の共通点はありますか。

藤田:出会いの場が増えるなかで、自己紹介を変えることの重要性が増していると思います。そこの時間の使い方が上手な人ですかね。人の話をきちんと聞ける人、ダラダラ話さない人はつながるのが上手です。さらに、興味を持たれるように、自分の肩書きや名前だけでなく、取り組んでいることや自分ができることを伝えた方がよいと思います。

あとは、「1人か2人と深く話せればいいな」と気軽に参加できればよいですね。30人の名刺をもらったけどれども、何も動いていないのよりも、1人と深く話してプロジェクトが生まれる方がいい時間だと思います。

——話しかけるまでハードルが高い人もいるかと思います。そういった方はどんなタイミングを狙っていくべきでしょうか。

藤田:とにかく誰かと話したいということであれば、ひとりぼっちになっている人がいれば話しかけるとよいですね。

また、これは主催者側のテクニックなんですが、懇親会では「パックマンルール」というのがあります。グループで円になって話すときには、ケーキの切り口のように円を1席分だけ空けておく、出入りは自由。この2つを最初に宣言して懇親会を始めると、驚くほどコミュニケーションが取りやすくなります。ひとりぼっちの人がいなくなるんです。飛び込むことが当たり前だという空気を作ってあげると、出会いやすくなりますね。

懇親会がパックマンルールではない場合に、参加者側からイベント主催者に、こうした手法があることを伝え、導入を提案するというのも、ハードルは高いですが一つの手法ですよね。

——これからの時代にむけてどのようにイベントを活用するべきでしょうか?

藤田:インプットとアウトプットのバランスを、上手くとるとよいと思います。

たまにイベントで見かけるのが、ライトニングトーク。5分間のなかで、参加者が自由に発表する場です。そういうところで積極的に手を上げて、話してみる。インプットだけでなく、アウトプットが求められる場に行ってみましょう。アウトプットが増えてくると、アウトプットするからこそ生まれるつながりもあるので、新たな出会いも出てくると思います。SNSで学びを発信するのもいいですね。さらにいえば、イベントを主催するのも、アウトプットの究極の形の一つだと思います。

文:吉田瞳
取材:國見泰洋
写真:西村克也