ビル・ゲイツ氏のメタバース近未来予想
コロナ禍、リモートワークの普及とともにオンラインビデオ会議が一般化し、会議のあり方は大きく変化した。
しかし会議を取り巻く状況は、メタバースの発展によって、今後数年でさらに大きく変わることになるかもしれない。
マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏は、2021年末に公開した個人ブログGatesNotesで、メタバース関連の最新技術動向を踏まえ、オフィスでのほとんどの会議は2〜3年以内にメタバース内で実施されるものになるだろうとの予想を発表したのだ。
ゲイツ氏は、現在普及している2次元のオンライン会議システムを「Hollywood Squares model」と呼び、このモデルは2〜3年以内にアバターによる3次元空間会議システムに取って代わられるだろうと指摘。
また同氏は、マイクロソフトとメタ(旧フェイスブック)がコラボプラットフォーム開発で提携しており、こうした取り組みにより関連テクノロジー開発が前進するとの見方を示した。
一方、現時点でメタバース内で表情やジェスチャーなどを詳細に再現するには、VRゴーグルやモーションキャプチャーグローブ、高品質音声システムなど高価なデバイスが必要であり、これがメタバース会議普及のボトルネックであるという認識も示している。
マイクロソフトは、2022年中にモーションキャプチャーグローブなどのデバイスを使わずウェブカムでアバターを動かすプロトタイプを導入する計画があるという。
メタとマイクロソフトの提携
ゲイツ氏が予想するように、今後2〜3年でほとんどの会議がメタバースに移行するのかどうかは不明であるが、プラットフォームが整い、人々がメタバース会議に多くの利点を感じるようになれば、自ずと普及すると思われる。
プラットフォームに関しては、現在マイクロソフトとメタがコラボプラットフォーム開発でタッグを組んでおり、この取り組みがメタバース会議プラットフォームの中核として台頭してくる公算が大きい。
この提携は2021年11月に発表されたもので、メタのコミュニケーションプラットフォーム「Workplace」とマイクロソフトのコラボプラットフォーム「Teams」の統合が進められるという。統合により、Teams利用者はWorkplaceのコンテンツを利用できるようになる一方で、Workplace利用者もTeamsのビデオ会議を視聴できるようになる。
マイクロソフトのTeamsは、2021年7月時点の月間アクティブユーザー数が2億5000万人に達した巨大プラットフォーム。現在は2次元インターフェースであるが、同社が開発している仮想空間コラボプラットフォーム「Mesh」との統合が進められており、2022年には「Mesh for Microsoft Teams」としてリリースされる予定だ。
一方メタのWorkplaceは、700万人の有料ユーザーを抱えるプラットフォーム。Teamsの仮想空間化にともない、WorkplaceもメタのVRコラボプラットフォーム「Workrooms」などとの統合によって仮想空間化する可能性がある。
2022年、米国では仮想大学キャンパス「メタバーシティ」が登場
職場でのコラボレーションや会議だけでなく、学校という空間がメタバースに登場する未来も見えている。
VR・ARによる学習を促進する米企業VictoryXRは2021年12月、メタとの提携でメタバース大学キャンパスを設立する計画を発表。2022年中に、米国にあるいくつかの大学キャンパスをそのまま3次元化した「デジタルツイン」の仮想キャンパスを創設する計画という。
このメタバース大学は、VRヘッドセット「オキュラス・クエスト2」を通じて、リモートで講義を受け、学習することが可能とのこと。
VictoryXRは、2021年春にアトランタの大学で米国初といわれる「メタバース大学(メタバーシティ)」を創設。今回の発表では、さらに10カ所の大学キャンパスをメタバース化する予定が明らかにされた。
メタは、メタバース事業の一環で、仮想空間における教育コンテンツを強化する方針。今後VictoryXRのようなメタバースにおける教育分野の取り組みが増える見込みだ。
メタやマイクロソフトのほかにも、世界で初めて時価総額3兆ドルを超えたアップルもメタバースのキープレイヤーとして台頭するとの見方がある。アップルのMacBookやiPadがオフィスでの働き方や学校での学習のあり方を大きく変えたように、同社が今後リリースするとみられるメタバース関連のハードウェアは、オフィスや学校にさらなる変化をもたらすことになるのかもしれない。
文:細谷元(Livit)