コロナ禍でスマホ利用時間が増加 ゲーム障害やネット依存傾向の割合は1.5倍以上も増加 KDDIら、スマホやネット依存の傾向を調査

KDDI、KDDI総合研究所、国際電気通信基礎技術研究所(以下、ATR)は、2019年12月(以下、コロナ前)と2020年8月(以下、コロナ禍)に、全国の20歳から69歳の男女51,043名を対象にオンラインで実施した調査の結果から、新型コロナウイルス感染症のパンデミックがスマホ依存、ゲーム障害、ネット依存に及ぼす影響(以下、同結果)を明らかにしたと発表した。

同結果では、コロナ禍でコロナ前よりスマートフォンの利用時間が増加したことや、ゲーム障害、ネット依存傾向の割合はコロナ前と比較し1.5倍以上増加したことなどがわかったという。

また、同結果の一部は、精神医学や人間の行動に関する多くの重要な研究成果が採録されているJournal of Psychiatric Research誌に採録されたとのことだ。

スマートフォンやゲーム、インターネットの誤った利用は依存症のような状態に陥るリスクがあり、スマホ依存、ゲーム障害、ネット依存などの呼称で知られている。

新型コロナウイルス感染症の影響がある現在、外出自粛や観光施設の閉鎖など、家で過ごすことを強いられる状況では、これらの問題は学力低下や体調不良、家族関係でのトラブル経験の増加といった事態に陥る可能性が考えられている。

そこで三者はコロナ前、コロナ禍のスマホ依存、ゲーム障害、ネット依存のデータを比較し、スマートフォン・ゲーム・インターネットにおける依存状態がどのような推移・傾向を示すのかを調査したとのことだ。

■調査結果

調査1.スマートフォンの利用時間は増加したが、スマホ依存傾向がある人は減少

コロナ前と比較して、コロナ禍では平日、休日のスマートフォンの利用時間が増加した一方で(グラフ1)、スマホ依存傾向を示す人の数はわずかに減少(グラフ2)。

左:グラフ1【スマホ利用時間の変化】
右:グラフ2【 スマホ依存傾向がある人の割合の変化】

中でも、スマホ依存傾向を判定する指標のうち、「スマホ使用のため、予定していた仕事や勉強ができない」という項目の平均値が減少していたという。

一方で、「スマホを手にしていないとイライラしたり、怒りっぽくなる」という項目の平均値は増加していた(グラフ3)。

グラフ3【スマートフォンに対する意識の変化】

「スマホ使用のため、予定していた仕事や勉強ができない」と言う回答が減少したのは、新型コロナウイルス感染症による外出自粛、テレワークの普及など各種オンライン化によってスマートフォンの利用機会が増え、スマートフォンが仕事や勉強を邪魔する存在から、生活のための重要な存在に変わり、スマートフォンに対する問題意識が低下したことが要因である可能性があると考えられるとのことだ。

しかし、「スマホを手にしていないとイライラしたり、怒りっぽくなる」と回答した人が増加していることから、スマートフォンが使えない状況になった場合、コロナ前に比べストレスを感じやすくなった可能性があるという。

調査2.ゲーム障害、ネット依存傾向を示す割合の増加

コロナ禍ではゲーム障害とネット依存傾向がある人を示す割合が1.5倍以上に増加(グラフ4)。

グラフ4【ゲーム障害ならびにインターネット依存傾向を示す人々の割合の変化】

また、ゲーム障害の中核的な症状である「耐性」「離脱症状」も増加(グラフ5)。

グラフ5【ゲーム障害の中核的問題である「耐性」「離脱症状」を示す人々の割合の変化】

これらの症状を持つ人は、ゲームプレイの長さに問題を感じてもゲームをやめにくく、治療にも時間がかかるとされているという。また、ゲーム障害に関しては症状の傾向から、一過性の問題ではなく、コロナ禍収束後も持続した問題となる可能性も示唆された。

さらに、新型コロナウイルスの感染者は非感染者に比べ、ゲーム障害になるリスクが5.67倍であることを確認。

ゲーム障害やネット依存傾向がある人を示す割合の増加は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによるストレスが一因として考えられるという。

中でも、新型コロナウイルスの感染者は感染による大きなストレスに対処するためゲームにのめり込み、ゲーム障害のリスク増加に繋がった可能性があるという。

■今後の取り組み

スマホ依存、ゲーム障害、ネット依存はパンデミックなどの環境変化に大きく影響されるということが分かった。

今後も継続的に調査を行い、スマートフォン・ゲーム・インターネットの過剰利用の問題がパンデミックを経てどう変遷していくのかを研究し、環境変化によるスマートフォンとの付き合い方を理解することで適切なスマートフォン利用の啓発を促しているとのことだ。

加えて、2024年度以降に提供開始予定のスマホ依存軽減アプリの開発にも知見を活用していくとしている。

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