資生堂は、肌を切らずに顔の毛細血管を可視化する独自技術を更に発展させ、顔全体の毛細血管を3次元で精細に可視化することに初めて成功したと発表した。

これまで、呼吸などによる体動の影響が大きく、立体的な構造をしている顔では、広範囲の血管を可視化することは非常に困難とされていた。今回、血管観察技術で世界をリードするワシントン大学Wang教授との共同研究により、新たな技術を実現したという。

同社は、肌全体を根本から健やかにするためには、ホリスティックなアプローチが重要と考えて研究を続けており、既に毛細血管がシミや肌のハリなど、美容と密接な関係があることを様々な視点から明らかにしているという。

この新たな技術は、血管研究をさらに深め、部分的なアプローチに留まらない顔全体のケアや、将来的には未来の肌予測への活用など、様々なことに応用できる可能性を秘めているとし、今後も、内外から健やかで美しい肌の実現を目指し、研究を進めていくとのことだ。

なお、同研究の成果の一部は化粧品技術者の世界大会(IFSCC ミュンヘン大会2018) で口頭発表している。

皮膚の血管は、非常に細かく複雑なネットワーク構造をしており、従来の技術では生きている人の皮膚血管を精緻に観察することは困難であったという。

そこで同社は2017年に、肌を傷つけることなく皮膚血管の構造を深さ別に高解像度で画像化できる手法である光干渉断層血管撮影技術(OCTA)を応用し、特に観察が難しいとされていた顔の毛細血管を観察する独自技術を開発。

OCTAは、独自に開発したアルゴリズムを用いて血流の動きを特異的に抽出することにより、肌の中の毛細血管構造を可視化。この技術を用いて、これまでに毛細血管と美しい肌の様々な関係性を明らかにしてきたという。

しかし、この血管可視化技術は観察範囲が狭く(最大12x12mm)、顔全体に対応するケアの開発など更に血管の研究を深めていくためには、より広い視野で顔の毛細血管を可視化する必要があったとのことだ。

また、生きている人の顔の血管を広視野に可視化するためには、顔特有の立体的な構造に対応し、かつ、呼吸などにより生じる体動ノイズを適切に排除する必要があり、従来以上に高精度かつ高速な血管を検出するシステムが求められるという。

今回、ワシントン大学のWang教授との共同研究により、新たな次元の血管検出システムを適用することによって、顔全体の毛細血管を可視化することに成功。

広い視野で肌の血管を捉えることにより、血管の部位ごとの分布的な特徴を正確に理解できるようになり、外見上はわからない血管の部分的な変調を検出することが可能になったとのことだ。

この新たな技術は、血管研究の発展に大きく貢献するとし、従来は部分的にアプローチしていたシミやハリなどのケアを顔全体へのアプローチへ広げることや血管による肌状態の予測など、様々な活用が期待されるとしている。

資生堂は、今後も最先端の技術を駆使しながら、人々の健やかで美しい肌の実現を目指すとのことだ。