ビジネスの場におけるグローバルスタンダードでは、初対面の相手の第一印象は「歯」が注目されている。つまり、歯並びが整って綺麗でいることが、その人の人格や教養、ステータスを表すと考えられているのだ。日本でも身だしなみを大事にするビジネスパーソンの代表格として、お茶の間の女性を魅了した初代バチェラー・久保裕丈氏がいる。久保氏は、経営者としてより高みを目指すべく歯の健康への関心が高い人物だ。そこで歯科医師・磯谷一宏先生のもとを訪ねて歯科健診を受診し、より歯の重要性を実感することになった。


※セルフチェックのイメージ画像です。自身の歯の健康状態を知るために、Web上でセルフチェックができます

35、36歳ぐらいからむし歯年齢が変わる

磯谷先生:最後に歯科医院に行かれたのはいつですか?

久保氏:4、5年前ですね。普段は、痛くなるまで行かなくていいかなと思っていましたが、私の周りで矯正をする人や歯のクリーニングに定期的に通う人が増えてきて、しっかり歯医者に通わなくてはいけないという気持ちが芽生えてきました。

磯谷先生:エックス線診査では顎の関節の形が正常で、顎関節症を心配する状態ではないです。一つひとつの歯の質は頑丈なようで、むし歯とはあまり縁がなかったようですね。骨の状態も現状では歯周病になりかけている部分は見当たりません。


画像:日本歯科医師会広報委員会委員 磯谷一宏先生(赤坂見附磯谷歯科室 院長)

久保氏:40歳近くになってくると、「歯周病が気になる」って人も増えてくると思いますが、私の状態はいかがでしょうか?

磯谷先生:口の中のばい菌が、歯に悪さをするのがむし歯、歯肉や骨に悪さをするのが歯周病です。それぞればい菌の種類が微妙に違います。一般的には35、36歳ぐらいでむし歯年齢から歯周病年齢に変わります。

それまでむし歯が全くなくて歯科医院に行く必要がなかった人が、ある年齢から、きちんと歯磨きしているのに歯周病が進行してしまうというタイプもあります。歯周病体質とむし歯体質の違いです。唾液の性状が変化するのだという説もあります。久保さんは今のところ、骨に歯周病の兆候はありません。

久保氏:歯周病はどういった症状が出てくるのでしょうか?

磯谷先生:一般的には、口の中がネバネバムズムズする。すっきりしない。口臭が強い、歯を磨いたブラシにほぼ毎回血がついている。あるいは歯科医院でエックス線撮影を行った際に歯の骨に関して指摘されるなどです。

歯周病は、ばい菌が骨を侵してしまう病気なのです。


画像:株式会社CLAS 代表取締役社長 久保裕丈氏

久保裕丈(くぼ ひろたけ)
東京大学大学院を卒業後、米系のコンサルティング会社A.T.Kearneyに入社。商社・メーカー・金融機関等への全社戦略策定やサプライチェーン・マネジメントを手がける。2012年、女性向け通販サイトMUSE & Co.を設立し2015年に売却。その後個人で数十社の企業顧問を務める。2017年、アメリカで大人気の恋愛リアリティーショー”The Bachelor“の日本版”バチェラー・ジャパン“のシーズン1の主役に抜擢される。現在は、家具のサブスクリプションサービスCLASの代表取締役。

久保氏:親知らずについても気になっているのですが、どんな状態でしょうか?

磯谷先生:日本人は、親知らずがうまく生えずに、横向きになったり埋まったままの人が多いです。久保さんの親知らずはかなり珍しいタイプで、4本とも綺麗に噛み合う状態で生えていて抜く必要のない状態にあります。親知らずを綺麗に磨けている人は少ないですが、歯磨きで何か心掛けていることはありますか?

久保氏:歯磨きは一日3回、朝・昼・晩にしています。しかし、親知らずのところが磨きづらいんですよね。無理やり磨くと奥の歯ぐきが痛くなるのですが、歯を磨く時の力加減はどうしたら良いのでしょうか?

磯谷先生:個人差があるので一概には言えないですが、口の中を歯科医師や歯科衛生士が診ると一目でわかります。「こすり過ぎですよ」などの口の状態に合わせたアドバイスができます。

3か月から半年ごとに歯科医院に通うのが理想的

磯谷先生:それではお口の中を拝見します。何か聞いておきたいことはありますか?

久保氏:以前、詰め物をしていたのが外れてしまって、しばらく病院に行かないでいたら、神経までむし歯が進行してしまった苦い経験があります。

磯谷先生:むし歯を放置すると、神経を取らなくてはならないケースがあり、治療の途中でやめてしまうと、歯が割れてしまうこともあります。
きちんと噛める歯の本数が、認知症、脳梗塞、糖尿病、寝たきりになるリスクに影響しているというエビデンスが出始めています。できる限り早めに治療して、多くの歯を健康に維持することが一生を左右しますよ。

久保氏:これから先は、歯に違和感がなくても、どれくらいの頻度で歯医者さんに行くのが良いのでしょうか?

磯谷先生:患者さんの歯や口の状態によりますが、平均的には半年に1回、または2、3か月に1回と言われています。まずは一度診てもらうことが大切です。

久保氏:歯の健康を保つためには、自分に合った先生のところで、定期的に歯や口の状態を診てもらうことが重要なのですね。

むし歯の原因には、ストレスも影響する

――久保さん、診察を終えての感想を教えてください。

久保氏:普段歯医者さんに行く時はむし歯を治す時だけなので、あんまり歯について全般的に質問できる機会ってないじゃないですか。今日はいろんな話が伺えて勉強になったのが率直な感想です。

歯はちゃんと磨いていますが、何年かに1回、ちょっとずつむし歯ができたりするので、これ以上はむし歯にはなりたくないなと思います。先生にお聞きしたいのですが、毎日磨いてもむし歯ってできるものですか?

磯谷先生:できる人もいます。「磨いていても、磨けていないから」。磨き残しが一番の原因です。さらに唾液の量ですね。ストレスがあると誰でも唾液は減りますので、口の中のむし歯菌が増えてむし歯になりやすくなります。唾液がたくさん出ていて、なおかつ毎日磨いている人はむし歯になりにくいですね。

それ以外にも、お医者さんから出ている薬の多くは唾液を減らす作用があることを覚えておく必要があります。唾液の成分には歯の表面をミクロレベルで修復する働きがあるので、唾液が少ない状態で乱暴に磨きすぎると歯が削れやすくなる点も要注意です。

久保氏:そうかもしれないです。ちょうど5年前、会社をやっていた時にストレスが凄かったんです。そのときは口の渇きが一番気になっていたんですよ。その都度、そういうタイミングでむし歯になっているのはありますね。

――久保さんは寝る前の歯磨きで気をつけていることはありますか?

久保氏:普段は、磨く時にはできるだけ隅々までやって、それから舌も磨いています。そのあとは、水以外は飲食しないようにしています。

口の中ってひだが多かったりして、そこに食べ物のカスが詰まっていることがあるので、その場合はうがいで取り除くようにしたりして気をつかうようにしていますね。

磯谷先生:歯科医師は歯学部専門課程の2年生か3年生の頃に正しい歯の磨き方を習うんですよ。それを自分でやってみて、磨き方の洗礼を受けると変わります。

なので歯科医院に行って診てもらい、教わるのが一番です。結局プロに客観的に診てもらった方が良いですよ。

プレゼンの前は口内も綺麗にしてから臨むのは当たり前

――久保さんに口腔ケアとビジネスの関係について伺います。プレゼン・打ち合わせの時に口臭で気をつけていることはありますか?

久保氏:商談前などには歯を磨くことはありますね。何も食べていなくても、緊張する場があったりすると口が渇くじゃないですか。仕事中はすごく気をつかい、歯ブラシは必ず持ち歩いています。

磯谷先生:久保さんの年齢で、それなりにお仕事をしっかりやられている方はそういう意識が定着しているだろうと思います。

プレゼンの前に身だしなみを整えるのと同じように、口内も綺麗にしてから臨む方が増えてきているんでしょうね。

――久保さんの中で、パフォーマンスの最大化を図るときに、歯との関係性を考えることはありましたか?

久保氏:それでいうと、「もしかすると口臭があるかもしれない」と気が散ってしまうので、その都度歯を磨いたりしますね。自分の気になることを一つでもなくすためには、歯や口の中の状態は大事かなと思いますね。

喋り続けていると口が乾きやすかったりするので、そうならない喋り方、腹式っぽい感じで息をするなどしていますね。

――まさしく久保さんのように、ビジネスシーンで活躍していく方が年齢を重ねることで、今後さらにケアが必要になってくると思うのですが、より気をつけないといけないことを教えてください。

磯谷先生:久保さんでいうと、今の良い状態を維持するためにも、ずっと長く診てもらえて、自分の歯の変化に気づいてもらえるかかりつけの歯科医を早く決めた方が良いと思います。

――今日先生とお話しして、今後は定期的に健診を受けようという意識になりましたか?

久保氏:やっぱりプロの方にしっかり診てもらわないといけないのだなって思いました。祖母は最期まで自分の歯で食べていたので、自分もそうありたいと思うと、予防は大事ですよね。一度状態が悪くなってしまうと治りにくいじゃないですか。

これから40、50、60歳になれば今より歯の問題は出てくるのだろうなと思うと、改めて予防は大事だと思いましたね。アメリカだとビジネスシーンで歯並びを気にされると聞き、口のエチケットとかもある程度グローバルスタンダードに合わせたいなって思っています。

文:池田鉄平
写真:西村克也