QRコードの読み取りで宛名書き不要。増えつつある配送サービスの便利機能とは

ライターという仕事柄、荷物をよく送る。メーカーに商品を借りて撮影し、返却するためだ。その時にとかく面倒なのが宛名書き。返却する字が上手くないので、丁寧にバランス良く書くには、それなりに時間がかかる。

そんな送り状への宛名書きを省略でき、発送の手続きをスマホで完結できるサービスが増えつつある。その1つがヤマト運輸の「宅急便+SMART(スマート)」で、もう1つが郵便局の「ゆうパックスマホ割アプリ」だ。今回、筆者が実際にヤマト運輸のサービスを体験したので、その実例を元に新たな配送サービスを紹介する。


「宅急便+SMART」サービス

「宅急便+SMART」で発送がラクに

ヤマト運輸では無料の会員制サービス「クロネコメンバーズ」を運営している。これは荷物を受け取ったり、送ったりするサービスをもっと便利に、もっとお得にするもの。お届け予定通知や不在通知などをメールや「LINE」で連絡してくれ、受け取り日時や場所を指定できるのが便利だ。

この「クロネコメンバーズ」のサービスに新しく加わったのが、「宅急便+SMART」だ。「クロネコメンバーズ」にログインして、「宅急便をスマホで送る」というメニューから操作。荷物の種別や発払いか着払いか、荷物のサイズ、荷物の内容などを入力する。


左:「クロネコメンバーズ」のWebサイト/右:「宅急便をスマホで送る」から操作し、「ログインして利用する」

住所は必要事項をスマホで入力するほか、よく荷物を送る相手なら、「クロネコメンバーズ」のアドレス帳に登録しておけば、それを選択するだけでいい。記入できたら、発送する最寄りの宅急便センターを選んで、発送予定日やお届け希望日、希望時間帯を指定する。

料金は宅急便センターで支払うほか、Apple Payやauかんたん決済、au WALLET、ドコモ払い、クロネコペイなどから選択可能。「荷物詳細を見る」からスマホにQRコードを表示する。


左:宅急便センターで支払うほか、オンライン決済に対応/右:全て登録できたらQRコードが表示される。

宅急便センターでこのQRコードをタブレットで読み取ってもらい、間違いがないか確認したら、送り状を印刷してくれる。後はその送り状を荷物に貼れば完了だ。決済はオンラインで済んでいるので、お金のやり取りがないのが便利。通常の宅急便同様、発送の控えがもらえるので、経費精算が必要な場合も大丈夫だ。

なお、ヤマト運輸では宅急便センターに設置してある端末を使って、「クロネコメンバーズ」のアドレス帳に登録した住所を送り状にプリントできるサービスを行っているが、それの場合はセンターで決済する必要がある。「宅急便+SMART」ではその名称通り、スマートに決済できる。


宅急便センターでQRコードを表示し、読み取ってもらう


送り状の宛名等が正しければプリントしてもらう

「宅急便+SMART」の発送は、宅急便センターからだと210円割引。セブン-イレブンやファミリーマートなどのコンビニからでも送れ、その場合の割引は160円になる。

セブン-イレブンではレジで店舗スタッフがバーコードをスキャン。配送用紙と専用袋を受け取り、荷物に貼り付けた専用袋に配送用紙を入れることで発送手続き完了。ファミリーマートではFamiポートで操作して、発行される「Famiポート申込書」を店舗スタッフに渡して、荷物に貼り付けた専用袋に配送用紙を入れて荷物を渡す。


プリントして送り状を荷物に貼り付けて完成

この「宅急便+SMART」のサービスだが、宛名書きはしなくていいものの、QRコードを読み取ってもらうために、宅急便センターやコンビニに荷物を持ち込む必要がある。そうやって持ち込んでくれた分、料金を割り引いてくれるというわけだ。運送業は人手不足が深刻な業種。

このような便利でお得なサービスを提供することで、スタッフが集荷する数を減らせるので、課題解決に貢献できるサービスでもある。

相手の住所を知らなくても匿名で発送が可能に

実はこの「宅急便+SMART」には、もう1つ便利なサービスがあり、「LINE」の友達なら、住所を知らなくても荷物を送ることができる。「LINE」の友達にお届け先住所の入力リクエストをして、本人に住所を書き込んでもらうのだ。


左:「LINEでリクエストする」で住所を知らない友達に住所を入力してもらう/右:リクエスト入力の期限は7日間。リクエストは拒否することもできる

入力した住所は送信者に知られることはない。もちろん、送った人の住所が相手に知られることもない。お互い匿名で荷物を送り合えるので、SNSで知り合った友達にプレゼントを贈ったり、フリマ等のやり取りも個人情報を知られることなくできるので便利だ。

匿名で送る場合、通常は匿名料金として100円(税抜)が必要になるが、2019年12月31日までは無料。ただし、着払いやクール宅急便の場合は匿名での配送を選択できないので注意が必要だ。

広がる宛名書き不要&匿名配送サービス

ヤマト運輸の「宅急便+SMART」とほぼ同様のサービスを、郵便局のゆうパックでも提供している。

それが「ゆうパックスマホ割アプリ」だ。郵便局でアプリに表示されたQRコードを読み取ってもらうことで宛名印刷でき、クレジットカードでアプリ内決済。その際、基本運賃から180円を割り引いてもらえる。

また、「かんたんSNSでお届け」機能で、住所が分からない相手にも荷物が送れる。ただしこの場合は郵便局やコンビニ、「はこぽす」での受け取り限定になる。「はこぽす」とは全国約300ヵ所に設置されたロッカーで、受け取りパスワードを使って解錠する。


郵便局の「ゆうパックスマホ割アプリ」

これらヤマト運輸の「宅急便+SMART(スマート)」や郵便局の「ゆうパックスマホ割アプリ」のサービスは、オークションやフリマのサービスにも活用されている。

例えば、「ヤフオク」では、出品者や落札者のために、ヤマト運輸と連携した「ヤフネコ!パック」と、日本郵便と連携した「ゆうパケット・ゆうパック(おてがる版)」という、ヤフオク!オリジナル配送サービスを提供。

出品時に「ヤフネコ!パック」または「ゆうパケット・ゆうパック(おてがる版)」のどちらかを選択。落札されたら表示される「配送コード」を使って、コンビのレジや端末で読み取ることで、配送に利用する伝票がプリントされる仕組みだ。

同様のサービスを楽天が運営しているフリマアプリの「ラクマ」や、人気の「メルカリ」でも提供。いずれのサービスも宛名書き不要に加えて、匿名配送サービスについても行っている。

利用が拡大するオークションやフリマサービスでも、これらの便利なサービスを提供することで、出品者が荷物を持ち込む仕組みが生まれた。そういう意味でも面白いサービスだと感じた。今後、ユーザーのさまざまなニーズに合わせて今回紹介したような配送サービスはさらに増えていくのではないだろうか。

取材・文:綿谷禎子

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