もはやビジネスに国境はなく、インターネットさえあれば(逆をいえば言語と物理的な壁さえなければ)ネットを介したサービスは世界共通に享受できるといえる。
そして近年、AIやブロックチェーン技術の高まりによって、その傾向はなおさら顕著だろう。
ところで、欧州のバルト三国の一つであるエストニアが「電子国家」と呼ばれていることをご存知だろうか?今回、そのエストニアに拠点を構える日本発のAisii OÜは、同国で、対話AIとブロックチェーン技術による次世代の対話AIコミュニケーションプラットフォーム構築のためICOを行うと発表した。
対話AIの開発者たちが知識をマネタイズできる
Aisii OÜ代表である結束氏は、これまで30年以上にわたり自然言語解析技術(NLP)と、高度言語理解技術(NLU)を専門に研究開発してきた株式会社 言語理解研究所(ILU)、RPA事業を中心に研究成果の応用・販売を行うIntelligent Machines Amaze You株式会社(MAY)の代表取締役COOを務め、国内外の大企業に日本トップレベルの言語処理AIの技術とその企画・コンサルティングを提供しきた。
また、今回のAisii OÜ創業には、エストニアのブロックチェーンスタートアップ市場をリードするブロックチェーンインキュベータ企業blockhive OÜの創業メンバーである日下光氏、長澤草氏、有村一照氏も参画する。
blockhive OÜは、エストニア政府系機関への暗号通貨、ICOに関するアドバイザーを務めるとともに、ブロックチェーン、スマートコントラクト技術を活用した電子ローン型資金調達モデルInitial Loan Procurementの提唱・開発者でもある。
既存の技術に加え、新たに開発中の対話に特化した認識モデルAIシステムと、ソーシャルキャピタル型情報指標システムとトークン活用システムを備えた「A-CORE」によって、これまでクローズドに企業に提供・実用化してきた対話AI構築のシステムを、ブロックチェーン技術を活用したオープンなプラットフォームとして構築していく。
Aisii OÜが構想する「aisiiプラットフォーム」は、今まで中央集権的に開発していた対話AIを、ブロックチェーン上の独自トークンであるAISトークンおよびブロックチェーン技術を活用することで、世界中のクリエイターや開発者が独自の知識を持つコンテンツとして開発可能になることを目的としている。
また、これによって、プラットフォーム上で独自の対話AIの知識を開発した開発者たちが、知識(=データ)をマネタイズできるようになることを計画している。
「世界最先端の電子国家」エストニア
エストニアは、「世界最先端の電子国家」と呼ばれ、Skypeが誕生したことでも有名だ。現在、世界各国からスタートアップが盛んに進出している。
同国では、「e-Government(電子政府)」と呼ばれる取り組みを推進しており、国のサービスの99%が電子化されているという。
AMPでもエストニアについて連載を行なっており、同国の最新テクノロジーやスタートアップシーン、電子国家として誕生した背景などに触れている。
同国の具体的な取り組みとしては、海外送金サービス「TransferWise(トランスファーワイズ)」やデリバリーロボット開発の「Starship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)」などがあり、世界中から注目を集めるテクノロジー企業を多く輩出している。
注目されるのが、2014年開始の電子居住制度「e-residency」だ。これは、オンライン上でエストニアの電子住民となれる制度。電子住民になるだけではエストニアに住むことはできないが、海外に住みながらエストニアで会社を設立し、銀行口座を開設することが可能で、主に海外のスタートアップに重宝されているという。
現時点で約2万7,000人の電子住民が登録されている。エストニアのメディアによると、日本の安倍首相もエストニア電子住民として登録されているらしい。国別でみると最も多いのは、フィンランドで3,400人だ。日本からは800人が電子住民として登録されている。
この電子住民によってエストニアで新たに設立されたスタートアップの数は、2017年11月時点で約2,700社に上る。新規に会社設立した電子住民の国籍を見てみると、ウクライナが314社でもっとも多い。次いで、フィンランド272社、ロシア240社、ドイツ200社、イタリア126社、英国119社、フランス114社、ラトビア97社、トルコ95社、米国87社、そしてインドが85社となる。
電子住民となった起業家はエストニアのスタートアップコミュニティーにアクセスし、そこで投資家やエンジニアなどとネットワークを構築することが可能だ。もちろん現地に住んで働く場合は、就労許可や滞在許可が必要になる。
このようなことから、多くのベンチャーが進出しており、今回のAisii OÜもその一つだ。
エストニアにコンピュータコミュニケーションの新しい体験を提供
エストニアは人口わずか130万人。そんな小国が今、世界最先端のテクノロジーを持つ電子国家として注目を集めているのだ。
そして、世界中から多くのベンチャーが進出する中、Aisii OÜはどう存在感を出していくのか。
Aisii OÜが目指すのは、話したいと思うすべての存在を対話可能にするコンピュータコミュニケーションの新しい体験を提供することだという。今後の展開に期待したい。
img: PR TIMES