ドローン時代の到来で需要増の「ドローン人材」

黎明期のドローン市場、今後爆発的に拡大する可能性を秘めている。これまでは市場規模や技術的側面に焦点を当ててきたが、「人材」という切り口でみるとまたおもしろい一面が見えてくる。

ドローンが普及するということは、ドローンに関わる人材の需要も増えていくということになる。そこで気になるのが、どんな分野でどれほどの人材需要が生まれるのかということではないだろうか。

無人機に関わる世界最大規模の協議団体、国際無人機協会(AUVSI)が2013年に発表したレポートでは、2025年までに米国内でドローン関連の雇用が10万以上創出される見込みであると報告されている。その分野は、農業、災害危機管理、メディア、石油・ガスなど多岐にわたる。これは米国内でのシナリオなので、世界全体ではさらに大きな数になることが想定される。

ドローン関連人材としてまず思い浮かべるのはパイロットだろう。そのほかには、データマネジメントやドローン整備、管制システムエンジニアなどがある。このように、ドローン普及にともなって、需要が増えていくドローン人材だが、そのような人材が増えていくと、企業組織内における構造も少しずつ変わっていくことになる。そうなったとき、ドローンに関わる経営幹部レベルの役職が生まれることも想像に難くない。最高財務責任者(CFO)や最高技術責任者(CTO)などに並ぶ役職だ。

実際そんな役職をつくった企業が米国にある。産業向けのデータ収集・分析サービスを行うFirmatek社だ。同社はもともと、鉱山、建設、廃棄などに関わる企業向けにデータサービスを提供してきたが、このほどドローンによるデータサービスも始めることにした。そこで、新たに設けたのが「最高ドローン責任者(Chief Drone Officer = CDO)」という役職だった。いったいどのような役職なのか、どのような人物がこの役職についたのか、次のセクションで詳細を見ていきたい。

世界初?最高ドローン責任者(CDO)の登場、その役割とは

Firmatek社が新設した最高ドローン責任者のポジションについたのは、アンドリュー・マキシモウ氏。マキシモウ氏はシリコンバレーのシスコシステムズ社で15年以上の経験を持つITスペシャリスト。2013年にドローン企業3Dロボティクス社の顧客サービス部門上級ディレクターに就任、鉱山や建設分野でドローンによるデータ収集・分析に携わった。そして2016年にドローンによるデータサービスを提供するDrone Dynamics社に参画し、その後2017年にFirmatek社CDOに就任した。


Firmatek社の最高ドローン責任者(CDO)のアンドリュー・マキシモウ氏(Firmatek社ウェブサイトより

このCDOの役割とはいったいどのようなものなのか。Firmatek社がマキシモウ氏に託したのは、3Dマッピングやデータ解析など同社が強みを持つ分野を生かしたドローンサービス事業の開発だ。既存の事業やワークフローにドローンを組み込み、新しいサービスを生み出し、Firmatek社の成長基盤を強固にすること。

Firmatek社がCDOという新しい役職まで設け、ドローン事業を進めようとしている背景には、顧客からの要望増加があった。また、データ収集・分析という自社のコアビジネスをドローンを通して拡大できるという手応えを得たからだ。

マキシモウ氏は、この可能性を現実のものとするため、技術的側面だけでな、財務などさまざまな側面を考慮し、ドローン事業の創出・拡大を推し進めている。データ収集するレーザー技術や解析するソフトウェア、そしてドローンそのものの性能が上がるなかで、そうしたテクノロジーを組み合わせ、真にインパクトを出すソリューションを生み出していくことがCDOの最大のタスクといっていいだろう。収集されるデータは、顧客の産業分野ごとに異なり、またそのデータから顧客が求める情報もそれぞれだ。ドローンを使い、これまでにないサービスをつくり上げていくわけだから、イノベーティブかつユニークに発想していくことが求められる。

企業の持つコア技術とドローンを結びつけ、どのように新たな価値を生み出していくのか。CDOに求められるのは、ドローンに関する知識だけでなく、ITテクノロジー、データ解析、産業分野ごとのニーズ、そしてビジネスセンスなどさまざまな知識・スキル・経験だ。非常に求められるものが多いポジションではあるが、同時に新時代を切り開く職であり、非常にやりがいがあるのも間違いないだろう。